ピースボートの活動に学ぶ 国連から軍縮教育本出版 東京

ピースボートの活動に学ぶ 国連から軍縮教育本出版 東京

国連軍縮部から書籍を出版したピースボートスタッフの畠山澄子さん=東京都新宿区で2020年11月17日午後2時54分、椋田佳代撮影

 地球一周の船旅を行っているNGO「ピースボート」(東京都新宿区)の活動を軍縮教育の観点からまとめた英語の書籍が、国連軍縮部から出版された。ピースボートはノーベル平和賞を受賞したNGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)の国際運営団体で、広島、長崎の被爆者が乗船して寄港先で証言活動をするプロジェクトを続けている。戦争がもたらす苦しみや痛みへの共感から始まり、軍縮に向けた行動につながるまでの過程を、実際の証言や船で起きたやりとりなどの具体例を交えて紹介している。【椋田佳代】

 書籍は国連軍縮部刊行の「市民社会と軍縮」シリーズの一つで、タイトルは「Navigating Disarmament Education The Peace Boat Model」(日本語では、軍縮教育 ピースボートの方法論)。新型コロナウイルスの影響で、紙面版に先立ち電子版が昨年11月に国連軍縮部のホームページ(HP)で公開された。

 ピースボートスタッフで著者の一人の畠山澄子さん(31)によると、出版のきっかけは2019年秋。軍縮や安全保障を議論する国連総会の委員会の会期中に米国・ニューヨークに船が寄港し、核兵器禁止条約の発効に向けたイベントを他のNGOと開催した。このときに打診があったという。

 軍縮教育は、平和教育の中でも兵器や戦争の被害を学び、なくすための教育を意味する。1983年、教科書問題をきっかけに大学生が船でアジアを巡った旅からスタートしたピースボート。被爆者とともに航海する「おりづるプロジェクト」を08年から実施するなど、現地を訪ね当事者の声を聞き、解決策を模索する手法を採ってきた。書籍ではピースボートの独自の経験を理論化。被害の痛みに共感する▽国際政治の仕組みを学ぶ▽自ら行動する−−の三つの柱に分類した。

 序章は広島で被爆したカナダ在住のサーロー節子さんが執筆。船旅に参加した被爆者の証言を多く取り上げた。なぜ核兵器をなくさなければならないのか、国際的に説得力をもって語るには歴史的な背景を知る必要があることを伝えようと、航海に参加した韓国の大学生が少人数の議論の場で「被爆者の痛みは分かる。でも、心の奥底では、なぜ被爆者だけが平和を語るのかと思ってしまう」と疑問を投げかけた場面も盛り込んだ。

 畠山さんは「戦争の被害を振り返るテレビ番組や核兵器の問題を巡る時事ニュースはたくさんあるが、被爆者が長年語ってきたこととどうつながっているのかというストーリーは表に出てきにくい。被爆者の声を(核兵器を全面禁止する)核兵器禁止条約につなげるためにどれだけの人が細かい作業を積み重ねてきたのか、大切なプロセスがあることを知ってほしい」と話している。

 書籍は国連軍縮部のHP(https://www.un.org/disarmament/publications/civilsociety/)から無料でダウンロードできる。

関連記事(外部サイト)