24時間営業の名物喫茶店「伯爵邸」が初の「閉店」 時短で「5時〜20時」に 大宮

24時間営業の名物喫茶店「伯爵邸」が初の「閉店」 時短で「5時〜20時」に 大宮

午後8時の閉店後、最後の客が出ていった「伯爵邸」の店内=さいたま市大宮区で2021年1月12日午後8時20分ごろ、山越峰一郎撮影

 埼玉県内全ての飲食店への営業時間短縮要請が始まった12日夜、24時間営業で知られるさいたま市大宮区の名物喫茶店「伯爵邸」も午後8時に閉店した。社長の宮城正和さん(71)によると、1975年の開業以来、改装工事期間を除いて閉店時間を設けるのは初めてという。宮城さんは「休んだ方が店の赤字は少ないが、従業員約30人の給料を8割は出したい」と話し、午前5時から午後8時までの時短営業を続ける。

 JR大宮駅東口を出てすぐの繁華街。豊富なメニューを紹介する看板や、B級グルメ「大宮ナポリタン」ののぼり旗が立ち、店頭には食品サンプルが飾られている。12日午後7時過ぎ。「昭和レトロ」と評され、NHK番組「ドキュメント72時間」でも紹介された店内では、特大のパフェを食べる若者や、女性3人組など4組8人がいた。大声で騒ぐ客はおらず、店内には有線の洋楽が響く。

 ラストオーダー直前の7時半過ぎ、2組が入店し、オムライスなどを注文した。東京都中野区の自営業の男性(67)は「仕事で週に何回か大宮に来る。この時間に食べてから帰宅していた。伯爵邸ならやっていると思った。開いていないと困る」と、ピラフをかき込んだ。

 伯爵邸は75年5月開店。米軍統治下の沖縄で生まれ育った宮城さんは高校進学のため上京し、東京・新宿で見た深夜喫茶をヒントに24時間営業の喫茶店を思いついた。周辺には大型キャバレーが4軒あったものの、店の前はほとんど人通りがなかったという。その後、東北新幹線開業(82年)を経て、県内最大の繁華街への発展を見届けてきた。「北関東への玄関口として、必ず栄えると信じていた」と振り返る。

 午後8時。外の照明を消したが、自動ドアの電源を切り忘れ、入ろうとする客3組に店員が「閉店しました」と告げた。24時間営業のため閉店を知らせる音楽やアナウンスは用意していなかったが、店内の客は自然と帰っていった。午後9時ごろには店内の照明も消し、防犯を兼ねた店員2人だけが残った。翌日の仕込みが始まる。

 宮城さんは「健康のため仕方がないが、店員が30人近くおり、1日6万円の協力金では全然足りない」と頭を抱える。周辺は居酒屋チェーンを中心に2月7日までの休業が相次ぎ、シャッター街へと変貌。伯爵邸も、平日で1日平均350人くらいの来客がコロナ禍で200人ほどになり、12日は約130人だった。それでも「従業員の給料を8割以上出したい」と、休業はせず時短営業を続けることを決めた。

 店に残った店員は、隙間(すきま)など普段はできていない掃除に取りかかった。「数日たったら、今までよりも店内がきれいになる」。宮城さんは最後に笑顔を見せた。【山越峰一郎】

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