「福岡に出す必要があるのか」「当然だ」 要請なき緊急事態に戸惑い

「福岡に出す必要があるのか」「当然だ」 要請なき緊急事態に戸惑い

福岡で要請なき宣言に戸惑い

「福岡に出す必要があるのか」「当然だ」 要請なき緊急事態に戸惑い

飲食店が軒を連ねる中洲の路地は往来する人がまばらだった=福岡市博多区で2021年1月13日午後8時44分、金澤稔撮影

 新型コロナウイルスの感染が拡大している福岡県が13日、緊急事態宣言の対象地域に加わった。小川洋知事が要請しない中での宣言発令。「突然すぎる」。営業時間の短縮要請で最も影響を受ける飲食店などから戸惑いの声が聞かれる一方、医療関係者は「当然だ」と評価した。

 九州最大の歓楽街・中洲(福岡市博多区)に店を構える創業40年のビアレストラン「コットン・フィールズ」オーナーの諸岡昭二さん(72)は、午後8時までの時短要請に従うつもりだ。コロナ禍で客足が減り、アルバイト従業員を減らし経費を減らしてきたが、前回の宣言時に受けた融資は底をつきかけている。「本音は午後8時以降も店を開けたいが、コロナの感染が広がるのは本意ではない」。他方、北九州市小倉北区の飲食店「一銭洋食 和羅部(わらべ)」の店主、近谷敏雄さん(71)は「一律の営業時間短縮ではなく人数制限など経済を動かす方法はあるのでは」と疑問を口にした。

 2次会利用が多いバーなどは死活問題だ。中洲で創業63年の老舗「ニッカバー七島(ななしま)」を営む七島最子(もこ)さん(57)は「午後7時のオープンと同時に『お酒は出せません』となってしまうのでしょうか……」と頭を抱える。ドアノブからメニュー表に至るまで消毒し、カウンターにアクリル板を設置するなど感染対策を徹底しているが客は半減。緊急事態宣言の対象に福岡県が入るとは思っていなかったため、時短営業の要請にどう対応するかはこれから考えるという。

 「午後8時までって、無理難題を押しつけられても」と憤るのは中洲のワインバーの男性店主(32)。1日6万円の協力金についても「こう言っては何だが、はした金ですよ」と吐き捨てるように言った。

 仕事帰りの会社員らの反応も賛否が分かれた。福岡県太宰府市のウェブ制作業、赤星三恵さん(40)は宣言に賛成し、週明けには在宅勤務に切り替える予定だ。福岡市南区の30代の公務員男性は「感染者が急増していたので宣言が出るのは当然だと思う」と述べつつ「経済が回らなくなる心配も大きい」と懸念する。JR小倉駅前で家路を急いでいた福岡県香春(かわら)町の男性会社員(61)は「感染が首都圏ほど増えていない福岡に出す必要があるのか」と否定的だった。

 一方、コロナ患者の対応病床がほぼ埋まっている北九州市立八幡病院(同市八幡東区)の伊藤重彦院長は「これ以上患者が増えたら診られないと思っていた。病床逼迫(ひっぱく)を解消する意味で宣言は最も必要だった」と歓迎。福岡県の「自宅待機者」は11日には初めて2000人を超えた。自宅では家族間の隔離が難しい上、健康管理する保健所職員の負担も大きい。福岡国際医療福祉大の財津裕一教授(保健医療行政)は「保健所職員は対応に追われ、年末年始に1日しか休めなかったという話も聞く。病院はもちろん保健行政の現場としても緊急事態宣言は早くに必要だった」と話した。【山口桂子、平川昌範、青木絵美、井上卓也】

関連記事(外部サイト)