特養施設で知事選の投票偽造 26日判決 被告は無罪主張 福井・大野

特養施設で知事選の投票偽造 26日判決 被告は無罪主張 福井・大野

裁判所=ゲッティ

 2019年4月の知事選で福井県大野市の特別養護老人ホームであった不在者投票で、認知症で意思表示できない入所者5人の代わりに勝手に投票したとして、公職選挙法違反(投票偽造)の罪に問われた元施設長、一乗公博被告(87)の判決が26日、福井地裁(渡辺史朗裁判長)である。福井地検は罰金50万円を求刑したが、一乗被告は「偽造する必要はなかった」として無罪を主張。認知症がある入所者の意思表示能力の有無や略式命令を受けた職員との共謀が成立するかが主な争点で、地裁がどう判断するか注目される。【横見知佳】

 一乗被告は19年4月4日、施設長を務めていた「ビハーラ大野」で不在者投票を実施。入所者5人の投票を職員が代理で記入する際、職員4人と共謀し、勝手に特定の候補者名を記入したとして、逮捕された。

 地検は一乗被告ら4人を略式起訴し、福井簡裁は30〜50万円の罰金命令を出した。職員3人の刑は確定したが、一乗被告は不服として正式裁判を求めた。一乗被告は公判で起訴内容を否定し「職員らは入所者の能力がごくわずかでも意思をくみ取ろうとしただけだ。偽造や共謀には結びつかない」と無罪を主張した。

 争点の一つは、認知症などで要介護4〜5の入所者5人に投票の意思を示せたかどうかだ。

 投票意思の確認や投票先について、証人尋問を受けた職員は、入所者に読み上げて尋ね「うん」という発語や指さし、うなずき、表情の変化で投票意思を確認していたと証言した。

 しかし、地検は公判で、事件後に行った医師の鑑定結果から「重度の認知症により認知能力や意思伝達能力はない」と主張し、投票できる判断能力はなかったと指摘。一方、弁護側は、地検の鑑定の映像から認知能力の低下は認められるものの、医師との間で会話などの意思疎通が成立しているとして、判断能力はあったと反論した。

 他の職員との共謀が成立するかも争点となっている。弁論によると、不在者投票は施設の1階食堂で入所者約80人のうち事前に意思確認をした約50人を対象に実施。当日、棄権した入所者もいた。職員は誘導、受付、代筆の各係に分かれ、投票管理者の一乗被告は食堂入り口付近で会場に入る入所者を名簿で確認した。複数の職員が入所者に投票先や自筆か代筆かなど投票方法を確認し、一乗被告は投票台から約6メートルの位置に座っていた。

 地検側は、一乗被告は職員と同じ会場内で投票の様子を見ており、偽造投票を続行させたことから共謀は成立すると指摘。弁護側は、一乗被告は投票管理者であり、投票事務には関わっていないと主張。また、仮に問題のある投票があったとしても、高齢による理解能力の低下から全ての状況を把握するのは難しく、偽造投票を容認していたとは言えないと主張している。

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