イベント中止、観光施設の臨時休館…「スカーレット」の地元・信楽 最終回前に新型コロナの影響

イベント中止、観光施設の臨時休館…「スカーレット」の地元・信楽 最終回前に新型コロナの影響

多くの窯元や工房が並ぶ「ろくろ坂」を散策する観光客=滋賀県甲賀市信楽町で2020年3月20日午後2時59分、礒野健一撮影

 2019年9月30日から放送されてきたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「スカーレット」が28日、最終回を迎える。女優の戸田恵梨香さんが演じた女性陶芸家・川原喜美子の波瀾(はらん)万丈の人生を描く物語は、舞台となった滋賀県甲賀市信楽町やドラマの核となった「信楽焼」を視聴者に強く印象付けた。スカーレット効果で放送開始から大幅な観光客増に沸いた地元・信楽だったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2月末からは予定していた関連イベントが中止になったり、周辺の観光施設が臨時休館したりと「異例」の状況が続く。最終回を前に、喜美子が生きた信楽の町は今――。

 「仕方ないとはいえ、残念の極み。信楽は昨年、夏の火祭りと秋の陶器祭りも台風で中止になった。いまいち乗り切れないね」。信楽伝統産業会館の内田儀一館長がため息をついた。同館は常設展で信楽焼の歴史を紹介するほか、19年12月からはスカーレットの撮影で使われた小道具などを並べた特別展「スカーレット展」も開催。2月22日には来場者が3万人を突破するなど、例年の10倍以上の来館者を数えていた。

 それからわずか1週間後の2月29日、新型コロナウイルスの感染拡大で、同館は臨時休館を余儀なくされる。市内の他の観光施設が3月25日から営業を再開する中、同館は館内の通気性が乏しく、来館者を安全に誘導できないとして、同29日まで休館を延長することを決定。スカーレットの最終回の翌日だ。

 それでも内田館長は「休館中も毎日、数十件の問い合わせがあり、周辺のロケ地や窯元を案内している。信楽は観光の潜在能力が元々高い。スカーレット展が見られなくても、満足してもらえるはず」と自信を見せる。最終回後にはドラマで実際に使用したセットを運び入れ、展示も充実させる計画という。「新型コロナが終息した頃、改めて遊びに来てほしい」と願う。

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 「山文(やまぶん)製陶所」は喜美子の親友で、女優の大島優子さんが演じた熊谷照子の実家「丸熊陶業」としてドラマ中に登場した。一般に開放された敷地には、信楽特有の青色「海鼠(なまこ)釉(ゆう)」を輝かせた火鉢が積まれている。観光客が「スカーレットと同じや」と写真を撮るなど人気のロケ地で、家族4人で訪れた京都府木津川市の30代男性は「照子がお気に入りで、出てくるとホッとする。信楽は子供の頃から訪ねているが、新鮮な気持ちに毎回なれるのが魅力。最後はハッピーエンドが見たい」と期待する。

 山文製陶所5代目の今井利幸さんは「元々は業者向けの製品を作る工場なので、スカーレットの放送前は年に数人が迷い込んできた程度だった。今はお客さんと直接話す機会が増え、職人も自らデザインして花器を作るなど、やる気がアップしている」と話す。

 スカーレットの放送に合わせ、市内の事業者ら関係団体は「『スカーレット』で甲賀を盛り上げる推進協議会」を設立。フランス語で「緋色(ひいろ)(スカーレット)」を意味する「エカルラート」を冠したブランドを企画し、地元の作家の陶器や特産の日本茶、日本酒などの商品をそろえた。商品を扱うアンテナショップ「緋色の商店街」の福山綾店長は「新型コロナで団体客は減ったが、それでも例年より人出はかなり多い。地元の職人やデザイナーのアイデアを生かした、おしゃれで楽しい商品を手に取ってほしい」とアピールする。

 ドラマに合わせたイベントや商品開発を引っ張ってきた推進協議会は、最終回後も活動を続ける。村木慶太郎会長は「スカーレットで毎朝『信楽』が連呼され、認知度は完全に全国区になった。新型コロナで客足が伸び悩んだことも『観光客が殺到せず、大混雑しなかった』と前向きに捉え、スカーレットファンを甲賀全体のファンにできる仕掛けを作っていく。これからが我々の本番です」と前を向いた。【礒野健一】

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