アフガン・ミニアチュールの世界へようこそ 85歳が初原画展を企画

アフガン・ミニアチュールの世界へようこそ 85歳が初原画展を企画

アフガン細密画の展覧会を企画した西垣敬子さん=兵庫県西宮市甲子園口1の「ギャラリーわびすけ」で2021年4月2日、高尾具成撮影

 四半世紀以上、アフガニスタン支援を続けてきた兵庫県宝塚市の西垣敬子さん(85)が、アフガンの細密画(ミニアチュール)を日本で初めて紹介する原画展を企画した。同県西宮市のギャラリーで11日まで開催中だ。入場無料。即売も行い、支援に充てる。西垣さんは「奥深く豊かな文化を伝えたい」と話し、今も政情が不安定な同国に思いを寄せる。

 アフガン北西部のヘラートは、14〜16世紀に中央アジアを治めたティムール朝が都を一時期置き、細密画の伝統が継承されている。描かれるのは、植物や幾何学模様による装飾文様のほか、宮廷生活や叙事詩をテーマにした人物画など多彩。豊かな色遣い、生き生きとした描写が特徴だ。ただ、内戦などもあって日本ではあまり知られてこなかった。

 今回展示されているのは、アフガン細密画の第一人者で、研究者でもある国立ヘラート大学のアブドゥル・ナセル・サワビー教授の作品約30点。華やかな金の彩色が施された作品のほか、モスク(イスラム教の礼拝所)やカリグラフィー(飾り文字)が盛り込まれているものもあり、緻密な表現に目を奪われる。

 原画展を企画した西垣さんは「宝塚・アフガニスタン友好協会」の代表を務め、現地に通って長期支援を続ける数少ない日本人だ。渡航は42回を数える。子育てが一段落ついた1983年に神戸大に学士入学し、興味があった中央アジアの仏教美術史を学び始めたのがアフガンと関わるきっかけだった。

 93年に東京であったアフガン大使館主催の写真展で戦火の悲惨な光景に衝撃を受け、94年1月に同協会を設立。すぐに大使館から写真を借りて宝塚市内で展示し、集まった寄付約40万円を手に同年11月、内戦ただ中のアフガンに赴いた。同国東部のジャララバードを拠点に、手回しミシン寄贈、孤児の少女への義足支援、女子寮建設――などに奔走。女性教育を禁じるタリバン政権下で、個人宅などで開かれていた「隠れ学校」の女性教師の給料も支えた。2001年の米同時多発テロ後、米軍などによる空爆が始まったが、支援の手は緩めなかった。

 アフガンの細密画に出会ったのは04年ごろ。路上生活をする男の子が描いた1枚の絵だった。「ペルシャ(現在のイラン)のミニアチュールね」と声を掛けると、「違うよ。アフガン・ミニアチュールだよ」。帰国後にインターネットなどでヘラート大美術学部細密画学科を見つけ出し、国際電話をかけた。その相手がサワビー教授だった。

 その後、同協会が治安が悪化したジャララバードからヘラートに活動拠点を移し、西垣さんはサワビー教授と対面。研究書の不足など厳しい実情を知った。サワビー教授が執筆したペルシャ語の論文を約3年かけて邦訳し、売り上げで美術書を送った。地道な活動に対し、ヘラート州政府から表彰も受けた西垣さんは「細密画との出会いは、長年の活動を見守ってくれた神様からの贈り物」と振り返る。

 大国に翻弄(ほんろう)されてきたアフガン。草の根の交流を長年続けてきた西垣さんは、アフガン人自身による和平の実現を願っている。「治安情勢やコロナ禍を受け、年齢的にも現地との往来は難しくなった。でも多くの人たちに少しでも関心を寄せてほしい気持ちに変わりはありません」

クリアファイルセットも販売

 「古都ヘラートの美〜アフガニスタンの細密画〜」展は、西宮市甲子園口1のギャラリーわびすけ。無料。午前11時〜午後5時、最終日の11日は午後4時まで。問い合わせは同ギャラリー(0798・63・6646)。

 同協会では20年から細密画を塗り絵にして販売し、売り上げを送る取り組みも始めている。原画を描いたのはサワビー教授の教え子の20代女性9人で、同教授の細密画をあしらったクリアファイルが付く。「ミニアチュールぬり絵・クリアファイルセット」(9枚入り)は1400円(送料別)。申し込みは西垣さんのメール(keiko665@gmail.com)へ。【高尾具成】

アフガニスタン

 面積65万2225平方キロ(日本の約1・7倍)で人口3890万人の多民族国家。首都はカブール。1979年の旧ソ連による軍事侵攻で内戦が激化。89年の旧ソ連軍の撤退後、イスラム原理主義を掲げるタリバンが台頭した。2001年に米同時多発テロが起き、米軍などが報復攻撃してタリバン政権は崩壊。04年に新憲法が発布され、カルザイ大統領が選出された。14年からガニ大統領。

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