鉄道車両メンテ会社の社長がパラスポーツから教わったこと

鉄道車両メンテ会社の社長がパラスポーツから教わったこと

障害者雇用に力を入れている堀江車輌電装のオフィスで社員と談笑する堀江泰社長(右から2人目)=東京都千代田区で2021年2月19日、大西岳彦撮影

 障害者の雇用環境は厳しい。法定雇用率を達成した企業は半分に届かない。一方で、障害者雇用に積極的に取り組んでいる会社もある。その一つ、鉄道車両のメンテナンス会社「堀江車輛電装」(東京都)は働き方にもこだわる。きっかけは社長のパラスポーツとの出合いだった。【五十嵐朋子】

 今から8年前のことだ。4代目社長の堀江泰さん(41)は、知人から誘われパラスポーツに関する講演を聞きに行った。帰宅後、自分が高校時代に打ち込んだサッカーのことが頭に浮かび、「障害者サッカー」とインターネットで検索してみた。出てきたのは、2010年に開かれた知的障害者サッカー世界選手権の日本代表戦の動画。精巧な戦術や、大柄な外国人選手をかわしていく技術に驚いた。

 「何か関わりたい」と思い、ボランティアで知的障害者サッカーのスポンサー探しや大会運営などを始めた。それから障害に対するイメージががらりと変わった。それまで障害者と接した経験はほとんどゼロ。知的障害に関する知識もなく、「暴れたりするのかな」と想像したことさえある。だが、日本代表の選手たちと接してみると、みんな「人なつっこいサッカー好きの弟」のようだった。

 一方で、障害者を取り巻く雇用環境の厳しさも知った。選手たちの多くは特別支援学校を卒業後、工場勤務や配送など比較的単純な作業の多い仕事に就くが、競技と仕事の両立に苦労していた。「けがをしても休みづらい」「国際大会があっても長期の休みを取りづらい」――。

 そこで、障害者雇用支援のため15年から、求職中の障害者と雇用先をつなげるマッチング事業を始め、16年には障害者の雇用の場を創出しようとビル清掃会社を買収した。

 障害者雇用促進法は従業員43・5人以上の会社に、従業員の2・3%以上の障害者を雇用するよう求めているが、堀江車輛電装は従業員67人で雇用率は約6%と大幅に上回る。

 雇用率の高さだけではない。仕事の適性にも配慮する。雇用支援の一環で行っている障害者向けの就労体験で17年から講師を務める男性はその一例だ。大学卒業後に発達障害と診断され、16年に障害者雇用枠で採用された。当初はビル清掃を担当していたが、精神保健福祉士の資格を持っていることもあり、就労体験の講師の方が合っているとして配置転換された。

 昨春、新型コロナウイルスの影響でいち早く「リモート就労体験」を始め、テレビ会議機能などを使いテレワークでデータ入力などの事務作業を体験できるようにした。講師の男性は「トライアンドエラーを繰り返すことで自分の職域が広がる。『やってみよう』の精神で試行錯誤することがいい働き方につながると思う」と語る。

 堀江社長に特別な意識や気負いはない。「どの作業が向いているか、今の仕事量は合っているか、一定の配慮さえすれば、『障害者雇用は難しそう』と身構える必要はない。その人の人間性を掘り下げる感じです。障害があってもいろいろな仕事ができると証明したい」

 厚生労働省によると、20年6月時点で民間企業の法定雇用率は2・2%(21年3月から2・3%に引き上げ)で、達成しているのは48・6%と半分に満たない。一方、国の機関は97・8%(法定雇用率2・5%)、都道府県は89・3%(同)と高水準だが、市町村は70・6%(同)、自治体の教育委員会は38・6%(法定雇用率2・4%)にとどまる。

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