糖尿病による腎不全に進行抑制法 マウスで成功 透析減らせるか

糖尿病による腎不全に進行抑制法 マウスで成功 透析減らせるか

(写真はイメージ)=ゲッティ

 糖尿病に伴って発症する腎不全に対し、腎機能が比較的残っている段階で細胞の機能を安定化させる抗加齢分子を投与することで、病気の進行を止められることをマウスを使った実験で確認したと、慶応大の研究チームが米腎臓病学会誌で発表した。腎不全になれば、人工的に血液中の老廃物や水分を取り除く人工透析を受ける必要がある。しかしこの分子の投与で発症を抑えられるようになれば、患者の生活の質の維持につながる可能性がある。

 糖尿病によって腎臓内の器官が傷むことで発症する腎不全は、糖尿病性腎症と呼ばれる。日本透析医学会によると、国内では2017年に約4万人が人工透析を開始し、このうち糖尿病性腎症は約1万6000人と最多を占めた。しかし、現時点で、腎臓そのものへの有効な治療法がないことが課題になっている。

 そこで研究チームは、まず、糖尿病性腎症を発症すると、「ニコチン酸モノヌクレオチド(NMN)」と呼ばれる抗加齢分子の産生が体内で減少することを、患者の細胞などを使って明らかにした。NMNが減ると、腎臓中で老廃物と必要なものとを分別する役割を果たす器官が壊され、機能が失われるという。

 次に、早期の糖尿病性腎症を発症している生後8週のマウスを用意し、NMNを2週間投与した。その後、生後24週になっても腎臓の機能は維持され、人工透析が必要な状況にならなかった。副作用は確認されなかった。NMNの投与で、腎臓の器官の破壊が止まったと考えられるという。

 患者への応用に向けては、ヒトに近い大型のサルなどでの実験で安全性を確認することや、患者に投与する薬剤の開発が課題になるという。研究チームの長谷川一宏特任講師(腎臓・内分泌・代謝内科)は「短期の投与で、効果が長続きするのを確認できたことが今回の研究の成果だ。4〜5年で臨床研究に進み、副作用などを慎重に見極めたい。人工透析に進む患者を減らせれば、医療費を安く抑えることにもつながる」と強調した。【渡辺諒】

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