かつての日常戻るか にぎわい 期待と警戒 緊急事態近畿解除

かつての日常戻るか  にぎわい 期待と警戒 緊急事態近畿解除

徐々に人通りが戻ってきた大阪・ミナミの道頓堀=大阪市中央区で2020年5月21日午後3時28分、木葉健二撮影

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言は21日、大阪、兵庫、京都の3府県でもようやく解除された。住民の間では、かつての日常に近づくことへの期待や、消えることのない感染への警戒が交錯し、経済回復は遠いとの諦めの声も。1週間前に先行解除された他の近畿3県も通勤や観光で京阪神とのつながりは深く、さまざまな反応があった。

 大阪・ミナミの道頓堀周辺は人通りが戻りつつある。大阪市の男性会社員(56)は「飲食や観光を楽しめる雰囲気が徐々に広がる」と解除を喜んだ。お好み焼き店の女性店主も営業時間制限の解除を歓迎し、「遅くまで開く店が増えれば人通りも戻る。通常営業に戻すか検討したい」と期待。ただ、府県をまたぐ往来の自粛要請は続き、「かつてのにぎわいは当面戻らないのでは」とも話した。

 大阪市の会社に勤める男性(28)は4月13日から大阪府島本町での在宅勤務が当面続く。「職場でしか見られない資料があったり、打ち合わせもできなかったりして能率が下がる」といい、通常勤務を待ち望む。

 神戸市の「明照認定こども園」は市の方針で受け入れを医療従事者らの子供に限定してきた。黒川泰代園長は「自宅で面倒をみる保護者の孤立が心配」と話し、「市が拡大したら親の勤務状況に合わせて段階的に受け入れを増やしたい。給食の場を園庭に移すなど『密』の防止策を考える」という。

 同市の中華街・南京町の土産物店「廣記商行南京町本店」の従業員、乳原(うばら)重樹さん(58)は楽観はしない。入り口に消毒液、レジ近くにビニールシートなどの感染対策を重ねるが、「団体客が来ない限り厳しい。修学旅行も当分は無理だろう」。売り上げは感染拡大前より9割減っており、「せめて半分程度に戻れば」と語る。

 京都市でゲストハウスを営むルバキュエール裕紀(ゆうき)さん(42)は「一市民として解除はうれしいが、宿泊業の厳しさは変わらない」と話す。5月の客室稼働率は6%と前年の95%から激減。従来は7割が外国人客で、海外からの入国禁止の影響は続く。雇用調整助成金や持続化給付金を申請したが、まだ支給されない。観光業は影響が長引くとして「更なる公的支援が必要」と訴える。

 同市で介護サービスのケアマネジャーを務める30代女性は「自分が感染したり、高齢者に感染させたりするリスクは残る」と気が緩まない。利用者との面談で新型コロナ患者の受け入れ病院を訪ねることもある。抗がん剤で免疫が低下中の人もいて、自分がウイルスを媒介しないかと不安に思う。小学2年の長男と、心臓に持病がある保育園児の次男の母でもあり、学校の正常化などへの期待は高めつつ「緊張しながら過ごす日は続く」。

 「新規感染者、入院患者が減りつつあり、現場の混乱のピークは過ぎた。第1波の先が見えたことは医療関係者も心の安定につながっている」と話すのは京都府内の感染症指定医療機関の50代の男性医師だ。一方で「これまではあくまで『対処』で、『対策』はこれから。平時の医療に戻しつつ、次の波に素早く対応できる体制作りが急務だ。特にマスクや防護服など、いまだに不十分な医療資材がなぜ届かなかったのかの検証が必要」と指摘した。

 大津市から大阪市内へ通勤する男性会社員(53)はJR石山駅から新大阪駅まで約40分乗車する。3月末から在宅勤務だが、今後は未定だ。糖尿病があり、感染予防対策はしているが、「満員電車では3密が避けられず、リスクが高まる」と不安に思う。

 21日にレジャー施設「アドベンチャーワールド」が一部再開した和歌山県白浜町の男性会社員(58)は「町内は観光関連の仕事が多く、人が来ないと経済が回らない」と話す。一方で「県外の感染者が多い地域から人が来るのは心配。解除は少し早いかな」と複雑な心情を口にした。

 奈良市の奈良近鉄タクシーの運転手、大塩晴道さん(68)は「奈良の宣言解除後も奈良公園はガラガラ。飲酒して乗車する地元客もほとんどいない」と指摘。寺社が集中する近鉄奈良駅周辺をカバーする営業所の売り上げの大半は首都圏からの客といい、「近隣府県との往来が戻ればありがたいが、感染を恐れて自家用車利用が増えているとも感じる。首都圏の解除や感染終息が見えるまで厳しい状況は続く」と話した。【鶴見泰寿、柴山雄太、反橋希美、中田敦子、小田中大、松本光樹、小西雄介、最上聡、高橋智子】

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