「子どもの心のつぶやき聞いて」 休校の影響 兵庫の大学院教授がチェックリスト

 新型コロナウイルス感染拡大で休校が続いた子どもの心のケアのため、東日本大震災(2011年)や熊本地震(16年)で活用された「心とからだのチェックリスト」に注目が集まっている。兵庫県立大大学院(神戸市)の冨永良喜教授(臨床心理学)が作ったもので、ブログで公開後、アクセスが1500件を超える日も。冨永教授は「教師や親が子どもの心のつぶやきを聞くきっかけにしてほしい」と話す。【井上元宏】

 冨永教授は、阪神大震災(1995年)で被災児童・生徒の心のケアに取り組み、東日本大震災で岩手県教委、熊本地震では熊本県教委のスーパーバイザーを務めた。チェックリストは東日本大震災の際に作成した。新型コロナでは3月、救急救命医の秋冨慎司・防衛医科大学校准教授らと「Covid−19子どものサポートチーム」を結成。一過性の地震や豪雨と違い、長期間感染の恐怖が続く中での心のケアや、新型コロナを踏まえた健康教育をインターネットや教育現場で提案している。

 チェックリストは、授業中に使うことを想定した中学高校と大学向けの基本パターンのほか、これをベースに小中学校向けに児童・生徒が自宅に持ち帰り、保護者と一緒に記入するようにアレンジした「健康チェックとれんらくノート」なども作成している。

 基本パターンではストレスチェックを中心に、生活チェックや新型コロナに関する知識レベルのチェックを加えた3パートで構成する。ストレスチェックの質問は5項目。東日本大震災で使った「なかなか、眠れないことがある」など四つに、熊本地震で付け足した「こわくて、おちつかない」も加えた。余震が続いた状況と感染の継続が似ているからだ。項目ごとに「ない」「すこしある」「かなりある」「ひじょうにある」の選択肢から選ぶ。

 生活チェックでは、せきエチケットや食事、睡眠など日常生活の8項目を尋ね、感染予防ができているかや、生活の乱れが出ていないかを確認。今思っていることを文章や絵で表現してもらう自由記述欄も設けた。回答を素材に親や教師が子どもとの会話を活発にし、信頼関係を深めて子どものストレスを軽減するのが狙いだ。

 新型コロナへの対処法に関する授業を想定した基本パターンでは新型コロナに関する知識レベルの変化を確認できるようにしたほか、チェックに合わせて対処法を学べるリーフレットも公開している。

 冨永教授は「感染防止策を学び新型コロナに立ち向かえるという自信をつけることでストレスが緩和される。終息時の心的外傷後ストレス障害(PTSD)も防げるのではないか」と話す。チェックリストは冨永教授のブログに複数パターンが公開されている。

 中学高校・大学向けの「心とからだのチェックリスト」(http://traumaticstress.cocolog−nifty.com/ver02/files/checklistcorona3stress5daily8.pdf)

 小中学校向けの「健康チェックとれんらくノート」(http://traumaticstress.cocolog−nifty.com/ver02/files/healthcheck20200511.pdf)

熊本の小学校で活用広がる

 熊本地震で被災した熊本県益城町立津森小(村上修司校長、児童96人)は、新型コロナウイルスの感染拡大による3月の臨時休校前に、「心とからだのチェックリスト」を使った授業を行った。熊本地震の時と似たストレス反応を示す児童もおり、頑張りを褒め、感染予防策を話し合って不安を乗り越えようとしている。

 津森小は熊本地震以降、冨永教授の指導で心のサポート授業を続けてきた。新型コロナでは2月28日に養護教諭が各クラスで約25分間(1年生は1時間)実施。リストでチェックすると、強いストレスを示したのは熊本地震の時と同じ児童。余震が続いた状況と同じように、感染への不安が継続していることが要因とみられた。授業では、新型コロナへの対処法を伝えることに重点を置いた。

 3月16日の臨時登校日で再度リストに記入してもらうと、ストレス指標は下がり、対処法を教えた効果もうかがえた。この日は児童が地震のストレス緩和のため作られた「くまモンヨーガ」に挑戦。休校中に頑張ったことを話し合ってもらい、自然な笑顔が戻ったという。6月からの学校再開後も、リストを使いながら心のケアを続ける方針だ。

 益城町ではリストを使った授業が他の小中学校にも広がり始めている。3月まで津森小で校長として心のケアに取り組んだ大塚芳生・熊本大教授(学校心理学)は「基本は子どもたちを安心させること。学校再開後は新型コロナとうまくつきあっていくルールを地域や保護者を巻き込みながら、児童と考えることが大切だ」と指摘する。

ストレスチェックの質問

この1週間に、つぎのことがどれくらいありましたか?

@なかなか、眠れないことがある

Aむしゃくしゃしたり、いらいらしたり、かっとしたりする

Bこわくて、おちつかない

C自分が悪い(悪かった)と責めてしまうことがある

D頭やおなかがいたかったり、からだのちょうしが悪かったりする

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