文化財切り取り 学芸員、分析結果を講座で発表か

文化財切り取り 学芸員、分析結果を講座で発表か

岩手県立博物館に保存処理を頼み、その後返却された白鳥舘遺跡の文化財。左側の上から2点と右側の計3点はX線写真で切り取りが確認されたが、見た目には分からない=同県奥州市江刺の市江刺総合支所で、藤井朋子撮影

 岩手県立博物館(盛岡市)の赤沼英男上席専門学芸員(61)による文化財無断切り取り問題で、赤沼氏が切り取った文化財の分析結果を、同館が開催する一般向けの講座で発表していた疑いがあることが分かった。赤沼氏はこれまで「切り取りは保存処理のために必要だった。了承が取れていると思っていた」と説明しているが、個人的な研究目的だった可能性が高まっている。【小鍜冶孝志、藤井朋子、三瓶杜萌】

 同館は月数回、「日曜講座」と題し、同館学芸員や外部講師らによる一般市民向けの講座を開いている。2014年5月25日のテーマは「奥州藤原氏の時代における金工と漆工技術」だった。

 毎日新聞が入手した内部資料には、同じ日付とテーマ名に赤沼氏の名前が入った、講座内容の原案とみられるA4判15ページの文書があった。文書には岩手県奥州市の白鳥舘(しろとりたて)遺跡(10〜16世紀)から出土した鉄器3点について、銅やニッケルの比率など分析結果が記載されていた。同県平泉町にある国史跡の柳之御所遺跡(平安時代)などから出土した鉄器と比較するなどした上で、「奥州藤原氏の時代の遺構から出土した鉄器・鉄塊の微量元素組成比によって、製品および鉄塊の多くがある特定の地域からもたらされた可能性が高いことが分かった」と結論付けていた。

 毎日新聞はこれまでの取材で赤沼氏にこの文書を示した上で、無断で切り取った文化財を分析することで自らの研究成果にしていたのではないかと尋ねた。赤沼氏は文書にあった3点のうち「1点は正規の分析で出た」とする一方で、「データ的には本来使うべきものではないのが2点入っている」と問題を一部認めた。赤沼氏は13日の取材に「直接私は答えられない。県教委を通してほしい」と語った。

 奥州市は同日の定例記者会見で、同館から無断切り取りについて「不適切な対応があった」と謝罪を受けたことを明らかにした。小沢昌記市長は「なぜそういう処理をしたのか全く分からない」と批判。市の担当者は「分析結果を講座に利用していたとは知らなかった」と困惑している。

関連記事(外部サイト)