沖縄戦を知らない世代が「知る事典」出版 おすすめ戦跡コースなどのガイドも

沖縄戦を知らない世代が「知る事典」出版 おすすめ戦跡コースなどのガイドも

若手研究者が中心となって執筆した「沖縄戦を知る事典」=福岡市で2019年5月24日午後6時42分、森園道子撮影

 太平洋戦争末期の沖縄戦を体験していない戦後生まれ世代の28人が沖縄戦の入門書となる「沖縄戦を知る事典 非体験世代が語り継ぐ」(吉川弘文館)を出版した。研究者だけでなく、学芸員や市町村史の編集者など、さまざまな立場で沖縄戦に向き合っている人たちが執筆。沖縄県民の4人に1人が犠牲となったとされる地上戦について、若い人たちにも読んでもらおうと企画した。

 執筆したのは、沖縄戦の研究で知られる吉浜忍・元沖縄国際大教授(69)が沖縄戦研究者の高齢化と減少に危機感を持ち、2004年に結成した「沖縄戦若手研究会」のメンバー。吉浜さんらが編集を務め、20〜60代のメンバー28人が文献の調査や証言者のインタビューを重ねて、2年半かけて書き上げた。

 事典では▽沖縄戦と今日の基地問題▽どうして沖縄が戦場になったのか▽沖縄の人々はどのように戦争に駆り立てられたか――などについて、証言を取り入れて分かりやすく解説している。また、ハンセン病患者にとっての沖縄戦や、本土の人たちが沖縄とどう向き合ってきたかまで、幅広く沖縄戦を考えられる構成となっている。

 項目ごとに資料写真や地図を添付し、参考文献や関連人物も紹介。資料館や書籍、おすすめの戦跡コースなどのガイドも付けており、中高生の平和学習でも使えるようにした。

 執筆者の一人で、沖縄戦に動員された女生徒ら136人が亡くなった「ひめゆり学徒隊」の悲惨な体験を伝える「ひめゆり平和祈念資料館」(糸満市)学芸員の古賀徳子さん(48)は「沖縄の人にとって沖縄戦とは何だったのかを伝えたかった。戦後74年だが、沖縄戦はまだまだ研究する余地がある」と語る。

 編集を務めた吉浜さんは「在野の人たちも執筆に参加したことで、多彩な切り口で沖縄戦を描くことができた。過ちを繰り返さないよう沖縄戦の実相を伝えていくには、研究者も研究を継承していかなければならない」と話している。「沖縄戦を知る事典」は204ページ、2400円(税別)。【佐野格】

20〜50代の執筆者、沖縄戦体験の継承への思い語る

 沖縄戦から74年。体験者が年々少なくなる中で、沖縄県南風原(はえばる)町で1日にあった発刊記念シンポジウムでは、20〜50代の執筆者がそれぞれ沖縄戦体験の継承への思いを語った。

 八重瀬(やえせ)町の嘱託職員として町史の編さんを担当する平仲愛里(あいり)さん(28)は、多くの犠牲者が出た沖縄本島南部での戦闘状況を証言を交えてまとめた。「南部の戦場にどれだけの住民がいたのかさえ分からず、戦没者数も推定。どれだけ調査が進んでも分からないことがあることを改めて実感した」と沖縄戦の実相に触れた感想を語った。

 編集にあたった沖縄国際大非常勤講師の吉川由紀さん(48)は「体験者が一人もいなくなる時代が来る。沖縄戦の何を、なぜ伝えていくのかが常に問われている。沖縄戦で亡くなった人たちに顔向けできるように研究を続けたい」と意気込みを語った。【遠藤孝康】

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