和牛受精卵密輸 焼き肉店経営者ら2人に有罪判決 大阪地裁「常習的な犯行」

 和牛の受精卵と精液を中国へ不正に持ち出したとして、家畜伝染病予防法違反などの罪に問われた男2人の判決が25日、大阪地裁であった。松田道別裁判長は「不正輸出を繰り返した常習的な犯行」と指摘。焼き肉店経営の前田裕介被告(51)=大阪市=に懲役2年・執行猶予3年(求刑・懲役2年6月)、無職の小倉利紀被告(64)=同=に懲役1年2月・執行猶予3年(同・懲役1年6月)を言い渡した。

 判決は、牛肉の輸出も手掛ける前田被告が、中国人実業家らに不正輸出を依頼され、商機につながると考えて引き受けたと認定。運搬役として小倉被告を勧誘するなど、主導的な役割を果たしたと判断した。

 さらに、輸出に必要な検疫を受けておらず、家畜の伝染病を広げる危険性が高かったと指摘。「我が国から輸出される畜産物への国際的な信用を失わせ、悪質だ」と批判した。

 ただ、いずれも起訴内容を認めて反省の態度を示しているとして執行猶予を付けた。

 判決によると、両被告は昨年6月29日、検疫を受けていない受精卵と精液の入ったストロー365本を大阪・南港からフェリーに持ち込み、中国・上海へ不正に輸出。だが、中国で輸入が認められず、帰国した際に不正が発覚した。

 検察側はこれまでに、両被告が受精卵などを8〜10回、不正に輸出したと指摘している。

 事件では、受精卵などを提供したとして、徳島県の畜産農家、松平哲幸被告(70)も同法違反ほう助などの罪で起訴されている。【戸上文恵】

国や自治体、遺伝資源の保護へ動く

 和牛の精液と受精卵の不正流出事件を受け、国や自治体は遺伝資源の保護に向けて動き始めている。

 農林水産省は、流出発覚後の今年2月に有識者検討会を設置。現在、牛の精液や受精卵は家畜改良増殖法で認められた施設しか販売できないが、購入者の規制はないため、畜産関係者以外への販売規制を求める意見が出ている。

 自民党のプロジェクトチームも今月7日、精液などの流通経路を都道府県が把握できる仕組みを整備すべきだとする提言書を政府に提出。農水省は今後、提言や検討会の議論を踏まえて法改正を検討する。

 国に先駆けて対策に乗り出した自治体もある。今回の事件で流出元となった畜産農家がある徳島県は5月、不正な流出を防止するための要綱を施行。精液や受精卵の販売時には、購入者が畜産関係者であることを確認するよう義務付けている。

 鳥取県も5月に検討会を設置し、不正流出に対する罰則などを盛り込んだ条例案の検討を進めている。

 受精卵と精液の輸出自体を禁じる法律はなく、今回の事件では、家畜の病気の流行を防ぐための家畜伝染病予防法が適用された。

 遺伝資源の保護に詳しい東京理科大の生越由美教授(知的財産政策)は、不正に対する罰則強化や抜き打ち検査が必要だと提言。「遺伝資源は流出すると際限なくコピーされ、ブランド価値が低下する。遺伝資源の持ち出しを法律で禁止するなど、国全体で危機感を持つべきだ」と指摘する。【戸上文恵】

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