一般市民から第一線へ 公募経た「即応予備自衛官」今秋誕生 「助ける側に」決意

一般市民から第一線へ 公募経た「即応予備自衛官」今秋誕生 「助ける側に」決意

攻撃目標に向け空包射撃を行う訓練参加者たち=宮城県多賀城市の陸上自衛隊多賀城駐屯地で2020年7月1日午後2時6分、松浦吉剛撮影

 自衛官OBではない一般公募出身の「即応予備自衛官」が今秋にも誕生する。陸上自衛隊東北方面隊で6月末から7月初めにかけて、全国に先駆けて男性4人が36日間に及ぶ訓練プログラムを修了した。9月に即応予備自衛官に任命される見通しで、非常時には現役自衛官とともに第一線に立つ。

 陸自の即応予備自衛官制度は1997年度、災害や有事の際の自衛官不足を補うため創設された。同じ非常勤でも後方支援に当たる予備自衛官と異なり、招集されると指揮官や補佐役ら中核メンバーのみで構成される陸自の部隊に組み込まれる。これまでに東日本大震災や2019年の台風19号など災害対応で5回招集され、延べ約2440人が被災地で給水や入浴支援、がれきの除去などに当たった。今回の熊本県南部などを襲った豪雨でも招集がかかった。

 こうした第一線で活動する即応予備自衛官になれるのは、自衛官OBに限られてきた。年間の訓練日数が30日で予備自衛官(5日)の6倍と長く、索敵や陣地攻撃など訓練内容もハードなためだ。しかし、訓練参加が厳格なことを背景に志願者は減少している。定員の充足率は04年度末(定員9004人)の70・4%がピークで、19年度末(同7981人)は53・4%に落ち込んだ。要員不足を解消しようと、防衛省は19年度から、一般公募の予備自衛官補から予備自衛官になった民間人にも門戸を開くことにした。予備自衛官のうち、一般公募出身は18年度末で3384人と全体の1割を占めている。

 一般公募出身の人が即応予備自衛官になるには、小銃(36日間)と迫撃砲(39日間)という二つの訓練プログラムのどちらかを受講する必要がある。部隊に入るのに必須の特技(資格)として火器の取り扱いに習熟してもらうためだ。また、働きながら受講するには職場の協力が欠かせないため、即応予備自衛官に任命された場合、就業先に1回限りで56万円を支給する制度も新設した。7月1日現在、全国で計約120人が即応予備自衛官を志願して小銃プログラムを受講。射撃を中心に陣地構築や格闘、応急処置といった訓練に取り組んでいる。

 陸自東北方面隊の多賀城駐屯地(宮城県)では昨秋から男性6人が小銃プログラムの訓練を始め、6月30日に1人目が全日程を終えた。報道公開された7月1日、予備自衛官として10年以上活動する岩手県大船渡市の会社員、森下佑也さん(39)と盛岡市の林業、本多公栄さん(39)が、射撃やほふく前進などを交えて陣地に攻め込む仕上げの訓練に打ち込んだ。この日、全ての訓練を終えた森下さんは「終わってほっとした。東日本大震災での自衛隊の活動を見て、助ける側になりたい気持ちが強まり志願した。体力や、さまざまな練度を上げたい」と意気込みを語った。

 陸自制服組トップの湯浅悟郎陸上幕僚長は6月25日の記者会見で「(自衛官OB以外から)即応予備自衛官になる仕組みができ、希望者が出てくるのは非常に心強い。現役の代表として、それに恥じないよう全力で頑張りたい」と述べた。

即応予備自衛官

 普段は会社勤めなどをしている非常勤の自衛官。有事の際に招集され、正規の部隊に組み込まれる。冷戦後の陸上自衛隊の常備定員削減や再編に伴い、1995年11月策定の防衛計画大綱で打ち出された。練度を維持するため年30日の訓練を続ける必要がある【松浦吉剛】

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