親族宅にも濁流、遺影なき別れ 熊本・千寿園で犠牲2人葬儀

親族宅にも濁流、遺影なき別れ 熊本・千寿園で犠牲2人葬儀

球磨川支流の氾濫で水没し、泥に覆われた千寿園の内部=熊本県球磨村で2020年7月6日午前11時27分、望月亮一撮影

 熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」で死亡した入所者14人のうち、大岩江美子さん(84)の葬儀が9日、同県錦町の斎場で営まれた。親族宅も被災したため遺影の準備ができなかった式場で、親族ら約10人が別れを惜しんだ。

 親族によると、江美子さんは同県人吉市の施設などで暮らした後、今春から千寿園に移ってきた。7年ほど前に脳梗塞(こうそく)にかかり車椅子生活を送っていたという。若い頃に始めた日本舞踊が得意で、好きな曲に振り付けを考え、地域の婦人会では披露するなど元気な人だった。

 親族宅などにあった写真も濁流に流され、祭壇に飾る遺影は準備できなかった。長女は「千寿園のスタッフは、母を助け出そうと一生懸命やってくれたと思う」と話した。江美子さんの自宅がある球磨村の同じ地区に住む女性(67)も被災し、参列はかなわなかった。「お悔やみを言うことも、見送ることもできなかった。悲しいし、申し訳ない」と声を落とした。

 同県人吉市の斎場では、大岩ヒサエさん(99)の通夜が営まれた。三男の和夫さん(74)によると、ヒサエさんは2017年に千寿園に入った。同市に住む和夫さんが母と最後に顔を合わせたのは2月。新型コロナウイルス感染防止のため面会が制限中で、廊下からガラス越しに顔を見ることしかできなかった。それでも、ヒサエさんは笑顔で手を振っていた。和夫さんは「球磨川が氾濫すると大変だとは思っていたが現実になるとは思っていなかった」と話した。【宗岡敬介、中山敦貴、清水晃平、宮城裕也】

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