西日本豪雨:決壊ため池、防災指定外 福山市、国指摘後も

西日本豪雨:決壊ため池、防災指定外 福山市、国指摘後も

豪雨決壊ため池は防災指定外

西日本豪雨:決壊ため池、防災指定外 福山市、国指摘後も

グラウンド(右上)の崩落でため池が決壊し、土砂崩れが発生した被災現場=広島県福山市で2018年7月14日、本社ヘリから久保玲撮影

 西日本豪雨で今月7日夜、広島県福山市駅家町向永谷の山の中腹にある二つのため池が、そのすぐ上に造成されたグラウンドの崩落で壊れ、土砂もろとも流された。この土砂崩れで、ふもとに住む女児(3)が死亡。市は周囲に危険を周知させる「防災重点ため池」に指定していなかった。貯水量は県の指定基準の4倍で、総務省から今年5月、市内の指定状況のずさんさを指摘されていた。市は取材に「基準からすれば指定する池に当たるが、未指定の経緯は分からない」と答えた。【矢追健介、堀江拓哉】

 市などによると山の斜面にあるため池は、勝負迫上(しょうぶさこかみ)池(約800立方メートル)と同下(しも)池(約3200立方メートル)。市は2000年ごろ、隣接する二つの池が同時に決壊した場合、ふもとの6戸12人に被害が出ると想定していた。地元の集落が数十年前に造成してつくったグラウンドは、ため池から約50メートル離れ、15メートルほど高い場所にあった。

 市内では5〜7日昼に約370ミリの雨量を観測。地元住民らによると、7日午後6時45分ごろ、グラウンドとのり面が崩れ、池をのみ込んで大量の土砂が流れ落ちた。ふもとの住宅の1階部分を直撃し、住人の甲斐朱莉(あかり)ちゃん(3)と30代の母親らが濁流にのまれた。母親は救助されたが、朱莉ちゃんは亡くなった。

 防災重点ため池は、都道府県が基準を定めて市町村が選定。ハザードマップを作って周囲に危険を知らせるよう国が求めている。県は指定基準を「人家や公共施設に被害が想定される総貯水量1000立方メートル以上のため池」と定義しているが、基準貯水量を大幅に超えるこの池は指定されていない。

 また、総務省中国四国管区行政評価局は昨年7月から、広島県を含む3県12市のため池の防災対策などをサンプル調査。今年5月に公表された報告書では、福山市を含む複数の市で、基準を上回るため池が未指定だと指摘した。ため池を巡っては、昨年7月の九州北部豪雨でも、福岡県朝倉市で防災重点ため池の対象外の池が決壊し、ふもとで犠牲者が出ている。

 今回のため池を管轄する福山市北部支所は「想定以上の雨量で、グラウンドが崩れることを想定していなかった」と話した。広島県も今後、ため池の緊急点検を急ぐ方針だ。

ため池 老朽化、各地で被害

 ため池は大規模な河川に恵まれない地域などで、農業用水確保のために人工的に造られたもの。全国に約20万カ所あり、雨量の少ない瀬戸内地方に集中している。最も多いのは兵庫県(4万3245カ所)で、広島県(1万9609カ所)が続く。その多くが江戸時代以前に造られ、老朽化などで防災上の管理が問題になっている。

 近年、自然災害によるため池の決壊が相次ぎ、国は都道府県や市町村に、防災対策を進めるよう働きかけを強めている。農林水産省によると、自然災害によるため池の被害は2016年までの10年間で約8800件あり、その原因の7割は豪雨で、3割が地震だった。東日本大震災(11年)では各地で多くの農業用ダムやため池が決壊し、犠牲者も出ている。

 農水省は13〜15年度、全国の自治体にため池の一斉点検を指示し、ほぼ半数の約9万6000カ所で調査が行われた。池の決壊時に、大きな被害が及ぶ恐れがある防災重点ため池の選定も促しており、全国で約1万1000カ所が指定されている。16年に策定した点検マニュアルでは、池の上部や周辺にも注意するよう通知した。

 住民に危険性を知らせることも課題だ。農水省は20年度までに、防災重点ため池の浸水想定を示すハザードマップを整備するよう自治体に求めているが、昨年3月末現在、公表は約4000カ所にとどまる。広島県では503の重点ため池のうち、25カ所しか公表していない。【矢追健介、堀江拓哉】

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