「いつもあなたのそばに」京アニの聖地とファン結ぶ、変わらぬ思い

「いつもあなたのそばに」京アニの聖地とファン結ぶ、変わらぬ思い

出町桝形商店街が京アニを応援しようと作製した缶バッジ。各店に配られた=京都市上京区で2021年7月6日午後3時46分、日高七海撮影

 36人が亡くなった「京都アニメーション」第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件から18日で2年。京アニ作品の舞台となった場所は「聖地」と呼ばれ、事件後も訪れるファンの姿が絶えない。新型コロナウイルス禍で人の流れは減ったが、京アニへの思いがファンと聖地を結び続けている。

 京アニ本社がある京都府宇治市。高校の吹奏楽部を題材にした「響け!ユーフォニアム」では、市内を一望できる大吉山展望台など各地の風景が描かれ、「聖地」として愛されている。

 市観光センターはユーフォニアムの放送に合わせ、2015年からファン向けに交流ノートを置いている。現在41冊目でノート目当てに来る人も。市観光協会の兼井茜さん(24)は「(聖地に)来たら、センターに寄ることが定着しているように感じる」と話す。

 当初はアニメの感想が多かったが、事件翌日からは京アニの社員らを気遣う書き込みも目立つようになった。「負けないで!」「時間をかけて、少しずつでも前を向いてください」。コメントを書くためにファンが列をつくるようになり、追悼用のノートも用意。19年11月に開かれた犠牲者のお別れの式に合わせ、市を通じて京アニに届けた。

 そんなノートも、新型コロナの影響を受ける。20年4月に緊急事態宣言が発令され、センターは一時閉館。不特定多数の人が触れるノートも撤去され、ファンから「どこにあるのか」と尋ねられることもあった。今は感染対策を徹底し、ノートは窓際のいつもの机にある。兼井さんは「できる限り続けたい」と話す。

 ファンの支えで、存続の危機から救われた聖地もある。宇治川沿いにたたずむ老舗旅館「亀石楼」(宇治市)だ。

 約10年前から「天ケ瀬」という部屋を指定する客が増えた。勤務する金丸公大さん(26)が理由を尋ねると、京アニ作品「CLANNAD(クラナド)〜AFTER STORY〜」に、この部屋がモデルとされる場面があった。以前は常連の年配客が中心だったが、徐々に若い客が増えた。

 だが、コロナ禍で客足が減り、経営は厳しさを増した。友人に相談し、クラウドファンディングを実施。ファンから寄せられた「(聖地を)無くしてほしくない」という声に背中を押された。20年5月から1カ月あまりで、約320人から目標額を上回る約370万円が集まった。

 「ファンの力を改めて感じた」という金丸さん。コロナ禍が落ち着いたら「また泊まりに来てほしい」と願う。

 商店街で生きる人々を描いた「たまこまーけっと」。13年にアニメが放映され、14年には続編の映画「たまこラブストーリー」も上映された。

 モデルとなった出町桝形(ますがた)商店街(京都市上京区)には12年6月、京アニのスタッフが取材で訪れた。商店街組合の理事長で「おがや時計店」の鋸屋(おがや)慎三さん(70)は店内で写真を撮ったり、話を聞いたりしていた様子を覚えている。「アニメを見ると、商店街の日常や雰囲気がよく伝わる」と懐かしそうに振り返った。

 アニメが放送されると、商店街はファンの「聖地巡礼」の場となった。「放映前は閑古鳥が鳴いていたのに」と衣料品店「セルフ岸本屋」の店主、岸本仁さん(62)は笑う。映画化に合わせて岸本屋が製作したオリジナルTシャツは、ファンの人気を集めた。

 鮮魚店「さが喜(き)」が13年から店先に置いている交流ノートは21冊目になる。店を経営する井上淳さん(75)は「事件で若い才能が失われたのは残念でならない」と話す。

 事件後、商店街はアーケードに手書きの追悼メッセージを約1カ月半掲げた。缶バッジを約120個作製し、映画に登場する「いつもあなたのそばにある」という文言を刻んだ。

 「商店街は京アニを見守り続けていますよ、という意思表示やね」と鋸屋さんは言う。コロナ禍で海外のファンが姿を見せることはほとんどなくなり、ノートの書き込みも減った。それでも井上さんは願う。「ファンの方には以前と変わらずに来てほしい」【日高七海】

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