原告女性「国は責任認め、おわびを」 旧優生保護法訴訟 福岡地裁初弁論

原告女性「国は責任認め、おわびを」 旧優生保護法訴訟 福岡地裁初弁論

弁論後に開かれた記者会見で強制不妊により子供を持てなくなったつらさを語る夫婦=福岡市内で2020年7月16日午後3時43分、山口桂子撮影

 旧優生保護法(1948〜96年)下で不妊手術を強いられ、憲法が保障する幸福追求権などを侵害されたとして、共に聴覚障害のある福岡市の男性(82)と妻の女性(78)が国に計2000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が16日、福岡地裁(立川毅裁判長)であった。原告女性が手話通訳を介して意見陳述し「国には責任を認めおわびしてほしい」と訴えた。国は答弁書で請求棄却を求め、争う姿勢を示した。

 手術を受けたのは男性。女性は受けていないが、夫が結婚直前に説明もなく病院に連れて行かれ手術を強制させられたことを結婚後に知った。「もう子を持つことができないと、本当に苦しんだ。夫は手術を受けたことによって人生を奪われた」と述べた。

 また、ハンセン病訴訟にも携わった徳田靖之弁護士も意見陳述した。旧法はその理由を「不良な子孫の出生を防ぐ」と明記しており、こうした「劣等な生」という烙印(らくいん)が、優生手術の対象である障害者に向けられたと非難。その上で「原告らの被害の本質は、単に子を産み育てる権利を侵害されたことにとどまらず、生きていては困る存在と烙印を押されたまま生きていく人生を強いられたことだ」と強調した。

 旧法を巡っては、2018年に提訴した別の男性の国家賠償訴訟で、20年6月の東京地裁判決は、旧法が改定された1996年時点で訴訟を起こすことができたと指摘。不法行為から20年で損害賠償請求権が消滅する「除斥期間」が経過したとして、訴えを棄却した。夫婦の訴訟でも除斥期間が争点になるとみられるが、徳田弁護士は差別や偏見は今なお継続しており「除斥期間が成立しているというのはあり得ない」と語った。

 法廷には原告や傍聴人向けに4人の手話通訳が入った。また、口の動きを読む聴覚障害者のために、弁護人や裁判官らはマスクではなくフェースシールドを着用した。【宗岡敬介、山口桂子】

意見陳述した徳田弁護士「問題を見過ごしてきた人、自分たちの問題に」

 弁論後に開かれた記者会見には、さまざまな障害者団体の当事者や支援者らが参加。弁論で意見陳述した徳田靖之弁護士は「優生保護法を廃止した時、国会も政府も反省のかけら一つ示していない。何度も改悪されたこの法について、議論一つされなかった」と批判した。

 その上で、旧法下の当時、司法関係者らも優生保護審査会の構成メンバーだったことに触れ「我々裁判に関わる者も、いわば加害者として手術を認めてきた」と強調。「そんな加害者の側にいた人間が、時間がたったから訴えを『認めない』などとよくぞ言えたもんだ」と断じた。

 また、会見に参加した記者らに向けても「マスコミも今は原告側に立った報道をしているが、この間何をしてきたのか」と指摘。「この裁判は、社会の一員として問題を見過ごしてきた人たちが、自分たちの問題として今生きている国をどう良くしたいのか、自らの課題としてやり抜かなければならない」と問いかけた。

 第1回弁論を終えた感想を尋ねられた原告の女性は「裁判はものすごく不安だったが無事に伝えられた。今後、国に対してさらに訴えていきたい」と手話で語った。【宗岡敬介、山口桂子】

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