遺族「解決する日信じて」 福岡・田川のタクシー運転手強殺20年

遺族「解決する日信じて」 福岡・田川のタクシー運転手強殺20年

大井房男さんが殺害され、放置されたタクシーを調べる捜査員=福岡県福智町(旧金田町)で2001年7月20日午前0時40分、木葉健二撮影

 2001年に福岡県田川市でタクシー運転手の大井房男さん(当時50歳)が勤務中に殺害された強盗殺人事件から19日で20年となった。兄貞男さん(77)=同県川崎町=は、タクシーが絡む事件が報道されるたびに大井さんと過ごした記憶がよみがえり、悲しみの底に突き落とされる。この20年で7人いたきょうだいは貞男さんら3人に減り、事件解決を見届けたいとの願いは日々強まるばかりだ。

 01年7月19日夜。貞男さんは同僚と食事中に大井さんが刺されたとの連絡を受け、店を飛び出した。

 大井さんは田川市川宮の道路脇で背中などを刺されて倒れているところを発見された。直前にJR田川伊田駅付近で乗せた客に襲われたとみられ、現場から約3キロ離れた同県福智町(旧金田町)に乗り捨てられていたタクシーからは売上金などがなくなっていた。

 貞男さんが現場に着くと多くの警察官がいた。県警田川署で安置された大井さんを一目見たいと願い出たが、司法解剖の前だからと止められた。「こっちは兄弟ぞ、どうして会えん」。必死に食い下がると、ベテランの刑事が「あなただけ」と部屋に通してくれた。客と思った相手に突如襲われたせいなのか。大井さんの複雑な表情は今も忘れることはできない。

 家族から「ふさ坊」と可愛がられた大井さんとは7歳離れていた。幼い頃はキャッチボールをして遊んだ記憶がある。貞男さんは大井さんに「さだ兄貴」と呼ばれ、慕われた。事件当時は同じグループ会社で貞男さんはトラック運転手。会社のガソリンスタンドで顔を合わせると、兄弟で世間話をするのが日課だった。「大人になってもふさ坊は末っ子気質で、兄たちを敬う気持ちがありながら人なつっこい性格だった」

 事件後、解決に結びつくヒントがないかと大井さんが倒れていた場所からタクシーが乗り捨てられた道をたどったり、全国各地でタクシー強盗の事件が発生したという報道に触れるたび県警に関連を尋ねたりしてきた。県警も延べ8万人以上の捜査員を投入してきたが、解決に至っていない。

 毎年お盆には大井さんの遺骨が眠る同県糸田町の納骨堂で手を合わせる。その日が近づくと「ふさ坊に犯人逮捕を報告できるだろうか」といつも複雑な気持ちになるが、7人きょうだいも今は3人で高齢となり、責任を果たさなければという思いも強まる。「20年は長いようだが、振り返れば早かった。いつか解決する日が来ると信じている」と話した。

 19日、県警田川署(0947・42・0110)は現場近くで街頭活動し、情報提供を呼びかけた。【浅野孝仁】

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