仏教学を世界に発信 創設100年・東方仏教徒協会が学術誌刷新

仏教学を世界に発信 創設100年・東方仏教徒協会が学術誌刷新

刷新した東方仏教徒協会の英文学術誌を手にする大谷大のローズ名誉教授(左)と井上教授。手前左は100年前の創刊号=京都市北区で2021年7月16日午後4時42分、千葉紀和撮影

 仏教学を世界に発信するため、仏教哲学者の鈴木大拙(だいせつ)らを中心に創設された「東方仏教徒協会」(事務局・大谷大、京都市北区)が2021年で100周年を迎えた。英文の学術誌「ザ・イースタン・ブディスト」を定期刊行し、仏教本来の意義を主に欧米に紹介する役割を果たしてきた。節目を機に協会は7月、「仏教の新たな魅力を伝えていきたい」と学術誌を全面刷新した。

 協会は1921年、東本願寺(真宗大谷派)が支援し、鈴木や、仏教学者で後に大谷大の学長も務めた佐々木月樵(げっしょう)らを中心に創設された。当時の欧米では、日本で主流の大乗仏教は「釈迦(しゃか)の教えから逸脱した通俗的な宗教」と受け止められる傾向があったという。このため、大乗仏教の意義を世界に紹介する役割が期待された。

大乗仏教の意義伝える「切り札」

 英文の学術誌は、その切り札として同年に創刊された。初期には鈴木の妻で米国人のビアトリス夫人らの尽力もあって年4回刊行され、海外事情に明るい鈴木や佐々木らの論文、仏教経典の翻訳などが掲載された。だが、戦中・戦後の混乱などで刊行が滞り、58年に一旦打ち切られた。

 その後、京都学派を代表する宗教哲学者として知られた西谷啓治らが中心となって65年に再開され、京都学派の思想や禅の魅力などを幅広く紹介。16カ国の大学や研究機関で200部が定期購読され、欧米の仏教学や東洋学に影響を与えた。しかし、近年は編集態勢が整わず再び刊行の遅れが目立ち、米国人研究者のロバート・F・ローズ大谷大名誉教授を編集長に、編集者を増やして3期目の刷新を図ることにした。

 7月に刊行した新シリーズの第1号は、寺島実郎・日本総合研究所会長の「現代世界と仏教」に関する講演録のほか、仏典の一つ「華厳経」のジェンダー平等やチベット僧院での教育カリキュラムなどを題材にした論考を掲載した。編集に携わる大谷大の井上尚実(たかみ)教授は「伝統と歴史を大切にしつつ、現代社会の諸問題に一石を投じる学術誌として、心を動かすような論文を入れていきたい」と語る。

 今後は年2回刊行予定。ローズ編集長は「海外の仏教学研究ではよく参照され、欠かせない学術誌だ。新たに100年間続けていきたい」と意気込む。

 学術誌の冊子での購読は年4000円。掲載論文は同協会のウェブサイトでも無料公開されている。問い合わせは同協会事務局(075・411・8020)。【千葉紀和】

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