昆虫でサッカーのフォーメーション!? こんちゅうクン、独特の表現で伝える魅力

昆虫でサッカーのフォーメーション!? こんちゅうクン、独特の表現で伝える魅力

北野伸雄さん=静岡県磐田市の竜洋昆虫自然観察公園で2020年7月27日午前10時35分、深野麟之介撮影

 クワガタの標本が付いたメガネ、クワガタの顎(あご)を模した帽子、クワガタの形をした金色のリュック――その風貌から、静岡県磐田市竜洋昆虫自然観察公園の公式キャラクター「こんちゅうクン」として親しまれている北野伸雄さん(34)。平日は館長として働きつつ、休日は公園内に出没し、ガイドとして活動。小学校で授業をしたり、ラジオに出演したりと幅広く活躍する。地元の子どもたちが「今日はこんちゅうクン、いる?」と、北野さんを目当てに公園にやってくることもしばしばだ。

 昆虫の研究者というわけではないが、昆虫に関わる仕事をする立場を「中途半端」と表現する。ただし、中途半端だからこそできることがあると考えている。「昆虫になじみのない人、知らない人に分かりやすく面白さを伝えることができる」。昆虫でサッカーのフォーメーションを組んでみたり、「一番、こっちを見ている気がする虫」などの独特の切り口で昆虫を紹介したり。思わず笑ってしまう方法で、昆虫に関心のない人たちの興味をかき立てようと工夫を凝らす。

 子どもの頃から昆虫を捕まえることが好きだった。「チョウが羽化して飛び立つ瞬間を見たい」と思い、自宅の電気スタンドにサナギをくっつけたこともある。理科の先生に捕まえた虫を解説してもらうことが日課だった小学校6年の時、アオスジアゲハの幼虫を見つけて育て始めた。だが、サナギからアゲハでなく、ハチがかえる。幼虫に寄生していたようだ。先生に報告すると、普段は上から目線なのに「くれないか」と頭を下げられた。「うれしくて、ますますのめり込んだ」

 昆虫の研究者を目指し、大学で本格的な研究を始めた。主な研究テーマはくしくも「カメムシに寄生するハチ」。農作物に悪影響を与える害虫であるカメムシを農薬でなく、ハチで駆除できないか。農業に応用するための基礎研究だ。大学院に進学もしたが、常に成果を求められるプレッシャーに心が折れた。そして、中退を決断。地元に帰り、家庭教師などのアルバイトを転々とする日々を送っていたが、昆虫への思いは断ち切れなかった。28歳の時、現職場で再スタートを切った。

 昆虫の一番の魅力は身近さだという。確かに、昆虫を目にしない日はない。身近さゆえに、うっとうしく思ったり嫌いになったりすることもある。けれど、一度、好きになってしまえば、すぐに触れ合えることも事実だ。「好きな物が身の回りにあふれていることを想像してほしい。きっと景色が変わる」と語る表情は、生き生きとしていた。【深野麟之介】

 ■人物略歴

北野伸雄(きたの・のぶお)さん

 1985年、浜松市生まれ。九州大学農学部卒、九州大大学院を中退。アルバイトや家庭教師などを経て、2014年4月に現在の職場で働き始める。16年9月に「こんちゅうクン」としてデビュー。サッカーも好き。

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