若いがん患者の卵子・精子凍結保存に助成 厚労省方針、21年度から

若いがん患者の卵子・精子凍結保存に助成 厚労省方針、21年度から

厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館=東京・霞が関で、竹内紀臣撮影

 若いがん患者らが治療の後でも子どもを作れるように卵子や精子などを凍結保存する施術について、厚生労働省は2021年度から費用を補助する方針を固めた。抗がん剤治療や放射線治療で生殖機能を失う恐れがあるため、同種の施術は少しずつ広まってきた。しかし、費用は高額で、がん治療費に加えて支払う負担は重く、助成を求める声が上がっていた。

 がん患者が抗がん剤や放射線による治療を受けると、卵子や精子の数が極端に少なくなったりして、子どもを作るのが難しくなることがある。治療前に卵子や精子を採取・凍結保存し、治療後に移植して子どもを授かるケースが出ている。将来に備えて施術を受ける小児がん患者もいる。

 費用は50万円以上のケースも多く、公的医療保険が適用されないため全額自己負担だ。経済的にがん治療との両立は厳しく、凍結保存をあきらめる患者もいる。自治体独自の助成が広まり始めたが、21府県4市にとどまっている。患者団体や与党の国会議員らが政府に対し、支援制度の創設を要望していた。

 厚労省は21年度から研究事業として助成を始める。がんに限定せず、再生不良性貧血など治療で生殖機能の低下が予想される疾患の患者が対象。「凍結保存の施術を受けても治療に支障がない」「43歳までに妊娠出産が可能な計画を立てられる」などの条件も課す。

 対象の施術は、女性は@体外受精・顕微授精による受精卵の凍結A未受精卵の凍結B卵子を採取できない子どもの卵巣組織の凍結、男性はC精子凍結(精巣内から採取するケースも含む)――を想定する。今後、有識者会議の意見を踏まえて詳細を決定する。

 助成額については、通常の不妊治療への助成並みの金額を目安に調整するが、がん患者の家計の厳しさや長期にわたる凍結保存の費用を考慮して決める予定だ。【原田啓之、中川聡子】

「患者仲間には金銭的に無理で保存を諦めた人がいる」

 闘病中に卵子を凍結した香川県の会社員女性(43)は「国が経済的支援に踏み切るならありがたい。最終的には公的医療保険の適用を目指してほしい」と話す。

 女性は血液細胞が正常にできない「骨髄異形成症候群」と診断され、34歳で骨髄移植を受けた。事前に医師から「放射線や抗がん剤を大量に受けると妊よう性(妊娠する力)を失う恐れがある」と告げられてショックを受けた。治療には迷いもあったが、医師から「卵子の保存が可能で、元気になれば妊娠出産できますよ」と説明され、紹介されたクリニックを訪ねた。

 当時は休職中で、収入がゼロ。凍結保存の費用約50万円は「高い」と感じたが、貯蓄を取り崩して捻出した。女性は「患者仲間には金銭的に無理で保存を諦めた人がいる」と話す。

 同種の施術の実施件数は統計がないため不明だ。厚労省研究班は、経済的支援があれば卵子や卵巣組織を凍結する女性が年間約4000人、精子を凍結する男性が約3000人いると試算している。

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