結婚式と披露宴一体 コロナ禍で「もっと良く」 愛知のプランナー

結婚式と披露宴一体 コロナ禍で「もっと良く」 愛知のプランナー

「挙式披露宴」で新郎新婦をサポートする藤井菜実さん=愛知県豊田市で2021年3月(結婚式場「アージェントパルム」提供)

 愛知県豊田市のウエディングプランナー、藤井菜実さん(35)が7月、全国のプランナーを集めた結婚式のプロデュース事例のコンテストでグランプリを受賞した。コロナ禍で式の延期や中止に悩む新郎新婦の心を動かした「未来で完成させる新しい形の結婚式」とは――。【酒井志帆】

 「どんな状況であってもチャンスに変えて、新しい価値を生み出す。この先も結婚式が必要とされるために、今私たち一人一人が試されている時。コロナ禍を経て結婚式はもっと良くなる」。7月6日、東京都内で行われたコンテストの最終審査の場で、藤井さんは訴えた。

 藤井さんがスピーチで紹介した事例は、今年1月に豊田市に住む一組のカップルに提案した「挙式披露宴」。従来の結婚式の後に披露宴を行うという通常のプログラムを見直し、二つを一体化した新しいスタイルだった。

 実はこのカップル、藤井さんに結婚式と披露宴のキャンセルを申し出ていた。コロナ禍で招待ゲストから欠席や不安の声が相次いでいた。そこで藤井さんは挙式披露宴を提案。一般的に20〜30分で済む結婚式を45分間に延ばし、生い立ち映像の上映やオリーブの木の植樹式、花嫁の手紙朗読などセレモニーの要素を追加。逆に、通常なら3時間程度かかる披露宴で用意するお酒や料理を取りやめ感染リスクを減らした。

 それだけではない。コロナ禍で参列できないゲストに対し、新郎新婦の新居に来てもらうための招待状を作り、小さなスコップを添えて贈ることを提案。コロナ終息後に気兼ねなく会えるようになった時、みんなで集まって植樹式を完成させるという意味を込めた。

 深刻だったカップルの表情が、藤井さんの提案を受けてパッと明るくなった。「新しいやり方を見つけてくれてありがとう。わくわくします」。このカップルは3月に挙式披露宴を開き、大成功に終わった。

 コンテストは結婚式の質の向上を目的に、リクルートが11年から開催し、今年で11回目。提案の独自性やチームとの協働力などが審査され、藤井さんは全国515件の中からグランプリに選ばれた。主催したリクルートブライダル総研の研究員、金井良子さんは「結婚式、披露宴と決まった型があるなか、時間軸を取っ払い、未来に向けて完成する新たな可能性を示してくれた。発表を聞いたプランナーが、新しい結婚式を生み出すことができるヒントを、強く指し示してくれた」と高く評価する。

式延期のカップル推計27万組

 このコロナ禍で新郎新婦を取り巻く環境は激変した。日本ブライダル文化振興協会によると、2020年度に全国で結婚式を延期したカップルは推計で約27万組、損失額は業界全体で約9500億円に上る。

 「結婚式を『今やりましょう』とも、『延期した方がいい』とも自信を持って言えない場面がたくさんあった」。コロナ下の挙式を思い悩む新郎新婦に対し、藤井さん自身も葛藤してきた。それでも「固定概念を外し、コロナ下でもっとより良くするための方法を考えないと、結婚式の未来はない」と危機感を強める。藤井さんの提案を受けてカップルが発した「わくわくします」という言葉に、藤井さんは「結婚式の未来を明るくする言葉」と手応えを感じている。

 リクルートの調査では、結婚を機としたイベントを「全くの非実施」と答えた割合が19年が19・3%に上り、17年の14・8%から増加した。一方、親族中心の食事会や写真撮影を行った人が増えるなど、コロナに関係なく挙式や披露宴に対する考え方は多様化している。

 「新郎新婦それぞれの意向に合わせた形を作り上げることを大事にしたい」という藤井さん。「コロナが落ち着いたら元の結婚式に戻るのではなく、もっといいアイデアや新しい形が生まれたらいいな」。時代や価値観が変わろうとも、藤井さんは新郎新婦に寄り添い続ける。

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