暴力団から中高生守れ 「排除教室」10年 犯罪手口は巧妙化

暴力団から中高生守れ 「排除教室」10年 犯罪手口は巧妙化

身近に潜む暴力団の存在などを生徒たちに教える「暴排先生」=北九州市八幡西区で2021年6月21日午後1時33分、中里顕撮影

 中高生らに暴力団の恐ろしさなどを伝える福岡県警の「暴力団排除教室」が今年で丸10年となった。「暴排先生」と呼ばれる講師が身近に潜む暴力団との接点や組織の実態について教えた生徒は延べ190万人。この間、福岡県内の暴力団情勢は若年層の比率が大幅に低下した。若者の加入阻止に一定の効果を上げているとみられるが、近年は新たな課題も浮かんできた。

 「暴力団は利用できる少年少女がいないかを探しています」。今年6月、北九州市立永犬丸中(同市八幡西区)で開かれた暴排教室で、生徒240人を前に女性講師が語りかけた。スライドに映し出されたのは、喫茶店や空港でたたずむ実際の暴力団組員の姿。一見すると会社員風に見える。

 講師は他にも商業施設やゲームセンターなど身近な場面で組員と出会う可能性があることを生徒たちに教えた。参加した女子生徒は「暴力団が意外に近くにいることを知った。自分で自分を守る大切さを学べた」と真剣な表情を見せた。

 暴排教室は、少年の暴力団への加入阻止を掲げる県暴力団排除条例(2010年施行)に基づき、入り口対策として11年4月に始まった。教員免許保持者を任期1年の専任職員として採用。県内の暴力団情勢を学んでもらった後、教室に派遣する。20年度は新型コロナウイルスの影響で派遣回数が減ったが、当初から県内の大半の中学高校が参加し、例年は年間約20万人が受講。現在は20〜60代の暴排先生8人が活動し、少年院などでも講演している。

 暴排先生の一人は「映画などの影響で、いまだに暴力団に好意的なイメージを持っている子は少なからずいる」と明かす。教室ではクイズ形式を盛り込むなど工夫を欠かさず「暴力団に関わると周囲も巻き込んでつらい思いをすると理解してほしい」と訴える。

若手組員の構成比大幅減

 県警は14年9月、全国で唯一の特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)の壊滅に向けた頂上作戦を開始。同会トップや組幹部を相次いで逮捕するなどし、未解決だった複数の市民襲撃事件を立件した。

 10年前は約3000人いた県内の暴力団勢力は20年末には1530人と半減。組織の弱体化とともに高齢化も進んでいるとみられ、13年末に44・8歳だった平均年齢も20年末に50・1歳となり、20〜30代の若手組員の構成比は40・5%から16%へと大幅に減った。

 実際に教室への参加経験者が勧誘を受け、組に入ることを断ったケースもあるという。県警が19年度の参加生徒2万2309人に実施したアンケートでは95・5%が「暴力団は暮らしに必要ない」と回答した。

 一方、ここ数年県警が警戒を強めるのは、若年層が特殊詐欺や違法な薬物の売買に関わり、知らないうちに暴力団関係者との接点を持つ危険性だ。暴排教室では特殊詐欺グループに関与して逮捕された少年の実例を紹介。そのグループの背後に暴力団がいたことを示して注意を喚起している。

 県警組織犯罪対策課は「取り組み当初より、暴力団犯罪は巧妙化している。実情に合わせた教育を通し、子どもたちに身近な危険を理解してもらえるよう工夫を重ねたい」としている。【中里顕】

関連記事(外部サイト)