復興五輪、どう伝えれば 震災語り部コーナー、県外から少なく

復興五輪、どう伝えれば 震災語り部コーナー、県外から少なく

東京五輪サッカー女子の中国対ブラジル戦を見る観客=宮城県利府町のキューアンドエースタジアムみやぎで2021年7月21日午後6時16分、和田大典撮影

 東京オリンピックの競技が始まった21日、利府町のキューアンドエースタジアムみやぎでも女子サッカー2試合が行われた。東日本大震災からの「復興五輪」がうたわれる中、被災した東北3県で唯一の有観客開催。都市ボランティアらは、新型コロナウイルスの感染拡大防止に配慮しながら観客を誘導し、語り部たちが震災10年の歩みを伝えた。【百武信幸】

 藍色の市松模様のユニホームを着た都市ボランティア約310人は、仙台空港や仙台駅、利府町の会場周辺に配置され、約半数は仙台駅周辺の案内に立った。同駅東口のシャトルバス乗り場近くに開設された「震災語り部コーナー」では、登録した語り部約30人のうち8人が被災体験を約10分ずつ語った。

 津波から逃れた経験を語ったのは松島町出身の京野宏美さん(42)。申込時は県内在住だったが、五輪の1年延期で北海道函館市に職場が変わり、ボランティア休暇を取得して駆けつけたという。「無観客で語り部活動ができない福島の仲間たちの無念も受け止め、被災地の思いを伝えたい」と話した。県外客の立ち寄りは少なく、耳を傾けた市内の女性(69)は「当時を思い返し、命の大切さを改めて思った。『復興五輪』になっておらず、県外の人にもっと伝えてほしい」と望んだ。

 仙台駅前では、「有観客開催」を巡りさまざまな思いが交錯。東口の集団接種会場に、新型コロナワクチンの接種を受けに来た宮城野区の山崎聡さん(62)は「スポーツは大いにやるべきだが、観客が『直行直帰』するのかわからない。無観客でもよかったのでは」と疑問を呈した。

 駅ビルのベンチで、真新しいサッカーユニホームをまとった背中を縮めるように座っていたのは横浜市から観戦に来た親子。娘(41)は「ためらいはあったが、人生で五輪を見られるのは最初で最後と思い、母と来ることにした」。ビーチバレーなど4競技のチケットが当選したが、有観客はこの試合のみ。2回のワクチン接種を終えたという母親(71)は「仙台がここまで盛り上がっていないとは」ととまどいつつ「今回は直行直帰するが、復興した様子はコロナが落ち着いたら見に来たい」と話した。

宮城知事「胸が熱くなった」

 会場を視察した村井嘉浩知事によると、21日の観客は約3000人だった。この日のチケットは約6000枚販売されたが、キャンセルが相次いだという。村井知事は、ゴールを決めたブラジル代表に大きな拍手を送る観客の姿に「胸が熱くなった。ここに至るまで3年間準備してきた。やって良かった」と感無量の表情だった。

 観客からは、「有観客にしていただき、ありがとうございました」と声をかけられたという。【面川美栄】

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