行動し続けた那須正幹さん 被爆体験語る「民主主義の申し子」

行動し続けた那須正幹さん 被爆体験語る「民主主義の申し子」

児童文学作家の那須正幹さん=山口県防府市で2021年6月9日、平川義之撮影

 3歳で終戦を迎え、平和憲法の下で育った那須正幹さんは「民主主義の申し子」との意識が強かった。だからこそ「行動する作家」であり続けた。

 執筆の傍ら、呼ばれれば全国どこへでも講演に駆け付けて被爆体験を語った。さまざまな平和活動に参加し、共同代表や世話人を務めた。近年では安保法制の違憲訴訟や、山口県上関町に建設が予定されている上関原発を巡る訴訟にも原告として加わり、平和憲法の大切さや放射線障害の恐ろしさを訴えてきた。語り口は穏やかで、常にユーモアを交えながらひょうひょうと語ったが、芯には確固たる思いが秘められていた。

 親子3代で読み継がれるロングセラーとなった代表作「ズッコケ三人組」シリーズの主人公たちは、那須さんや同級生がモデルだ。3人組は問題に遭遇しても自分たちで考えて行動し、乗り越えていく。彼らこそ平和と民主主義の申し子だった。1978年に始まったシリーズは2015年まで続き長く愛された。

 シリーズを終えるにあたって那須さんは、あとがきにこう記した。

 <彼らがあれだけ元気に駆け回れたのは、平和で民主的な日本だからであって、これからの日本はあまりいい時代にならないんじゃないか。そういう時代に生きる彼らを書きたくない>

 権力者に忖度(そんたく)して自由に物を言えない閉塞(へいそく)感が漂い、他者への想像力を欠いて極端な意見に傾きがちな現代日本は、那須さんが危惧する社会にますます近づいてはいないか。最後まで平和の大切さを説いた那須さんは今年3月、安保法制違憲訴訟の原告として山口地裁で意見陳述し、訴えた。「5年後、10年後に『あのとき違憲判断を下してよかった』と思える日が必ず来ます」。7月21日、請求棄却の地裁判決が出た。それを見届けるかのように那須さんは逝った。ズッコケシリーズで自由の精神を学んだ人々が那須さんの思いを引き継ぐ。【上村里花】

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