創刊96年 編集長のいない京大新聞 コロナ禍で中断もサイトで発信

創刊96年 編集長のいない京大新聞 コロナ禍で中断もサイトで発信

京都大学新聞社の編集員、池山航一郎さん(3年)=京都大学新聞社提供

 京都大の学生が主体となって運営・管理をする「京都大学新聞」は2021年で創刊96年を数える。発行する京都大学新聞社は大学や学内団体とは独立してジャーナリズム活動を行っており、新型コロナウイルス禍の制約がある中では、オンラインを活用した取材や編集など工夫を重ね、紙の新聞を発行し続けている。編集員の村田征彦さん(4年)や池山航一郎さん(3年)らに編集方針などを聞いた。【まとめ・菅沼舞】

「全員で決める」の発想で

 京都大学新聞社は現在、30人弱の学生が所属し、10人前後が実働的に編集員として取材・編集の新聞制作と営業などを行っています。入部の際は勉強会を開きますが、補佐をつけながら最初から記事をどんどん書いてもらいます。

 学業があるので、取材できる時間がある人が取材する柔軟なスタイルです。記者職、(レイアウトや見出し、記事の扱いを考える)編集職の役割は固定せず、号によって役目を変えてメリハリをつけています。1面のコラム「こくばん」、そして「デスク」と呼ぶ責任者は持ち回りです。「全員で決める」という発想のため、編集長はいません。取材内容や編集方針は毎週1回の編集会議でみんなで話し合って決めます。入学・卒業アルバムも制作しています。

 コロナ禍で活動に制約が出ています。20年3月31日に課外活動の自粛要請が出て、同年8月まで紙面発行を停止しました。その代わりに公式サイトで記事を配信しました。同年9月に新聞発行が再開できたとき、4〜8月分を一気に印刷しました。対面取材が難しく、博物館など取材対象が閉館するという先が見通せない状況でしたが、オンライン取材を導入し、ニュース配信を止めるという結論には傾きませんでした。

 京大の課外活動実施の指針では21年9月2日現在、対面取材は屋外でのみ可能です。活動は事前に大学に届け出なければいけないので、急な取材が難しいこともあります。昨年の新学長の就任会見は記者会見場に入れませんでした。

 編集作業では記事に間違いがないかをチェックする「赤入れ」をします。コロナ禍以前は記事を紙に印刷し、編集員が2人一組で赤ペンで線を引きながら確認していましたが、今は無料クラウドサービスを使いオンラインでやりとりしています。編集員の中には対面取材を経験したことがない人がいますが、制限がある中でなんとか兼ね合いを取っています。

学内唯一の報道機関として

 創刊96年の重みを感じます。例年、新入生歓迎会活動で編集員を勧誘できるかが心配ですが、これまで継続できています。デジタル全盛の今、アナログの紙の新聞をいかに幅広い層に手に取って読んでもらうかが課題です。とっつきやすいニュースばかりだと報道の役割が薄まる気がします。やはり一面はニュース性があるものを、と考えていますが、この点は柔軟に対応したいです。

 オンライン授業が導入され、学生生活は大きく変わりました。学生アンケートを実施したり、大学の中のいろいろな声を紙面に反映したりしたいと思います。月2回の発行なので速報性はありませんし、できることも限られますが、一般紙よりも記事の分量を確保できるため、テーマをしっかり掘り下げることができます。発表をそのままニュースとして流すのではなく、学内唯一の報道機関としての役割を果たしていきます。

京都大学新聞

 京都大学新聞は1925年、「京都帝国大学新聞」として誕生した。毎月1日と16日の2回発行(夏期休暇中除く)。1部100円で販売部数は約1万部。京大キャンパス内に販売ボックスが数カ所ある。学外にも販売しており、定期購読は年間3000円(消費税、送料込み)。

 村田征彦さんは「媒体の規模は小さいが、取材し、情報を発信して記録するという大学新聞の意義は大きい。発信力が弱い人たちの声を伝えて喜ばれると、役に立っていると実感できる」と語る。鈴木樹さん(3年)は「定期購読者が減っている現状だが、多くの人に京大新聞の存在を知ってもらいたい」。コロナ禍で新聞を読むようになり昨年入部した池山航一郎さんは「一般紙も含め幅広く読んでほしい」、日比野真帆さん(2年)、伏屋祐希さん(1年)も「京大新聞の存在を知ってもらいたい」と意気込みを語る。

 9月6日から、21年8月1日号を無料送付する期間限定の試し読み企画を開始。1人1部、新聞料金・送料不要。申し込み締め切りは10月6日で同下旬発送予定。京都大学新聞社公式サイト(http://www.kyoto-up.org/)記載の申し込みフォームに名前、送付先、メールアドレスを記入する。問い合わせは電話(075・761・2054)または電子メール(kup@ops.dti.ne.jp)。8月1日号の1面は「立て看訴訟 市と京大 請求棄却求める」「11月祭事務局 対面開催を提案」など。2・3面は「検証 京大のコロナ対応第3弾」。4面は「湯川記念館常設展示『湯川秀樹と読書』」、「京大総合博物館企画展『医師になる!』」など。

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