「お客さん戻って」「緩みつならがらぬよう」制限緩和に期待と心配

「お客さん戻って」「緩みつならがらぬよう」制限緩和に期待と心配

観光客の姿も少なく、シャッターを閉めたままの店舗が増えた国際通り=那覇市で2021年9月9日午後6時42分、遠藤孝康撮影

 福岡、沖縄など19都道府県の緊急事態宣言が延長されることになった9日、政府が同じタイミングで行動制限緩和の基本方針を打ち出した。自粛続きで疲弊する観光、飲食業界は緩和策が始まるとみられる10〜11月に向けて期待するが、ワクチン接種や新型コロナウイルスの陰性証明が条件だけに、自治体からは接種の同調圧力や感染対策の緩みにつながりはしないかと心配する声も上がる。

 「ようやく経済が回る兆しが見えてうれしい」。長崎県雲仙市の旅館「雲仙温泉東園(あずまえん)」の若おかみ、石田莉恵さん(36)は県境をまたぐ移動を認める緩和策に期待を寄せた。感染拡大に加え、温泉街では8月中旬の記録的大雨で土砂崩れが発生。客足が途絶え、1990年の開業以来初めて一時休館した。「県外客が7割なので苦しかった。11月は紅葉シーズン。少しでもお客さんが戻ってほしい」

 沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長は「具体的な制度設計が進むことを期待する」と政府方針を歓迎した。2020年に沖縄県を訪れた観光客は前年比63%減の約374万人。21年は5月からの緊急事態宣言が夏の観光シーズンを直撃し、修学旅行も延期が相次ぐ。下地会長は政府に「学生たちのワクチン接種やPCR検査をどうするか、具体的な方針を示してほしい」と注文した。

 一方、慎重な見方もある。旅行や飲酒にはワクチン接種かコロナ陰性の証明が求められるだけに、福岡県の飲食チェーン担当者は「一度に複数の客が来た時に逐一確認できるのか。運用面でトラブルが起きないか」と気をもむ。

 5回目の宣言延長が決まった沖縄県では、那覇市の衣料品店員の30代女性が「宣言が出ていても飲食などで外出する人はしている。期間だけ延ばしても意味がない」とうんざりした表情だった。玉城(たまき)デニー知事は記者会見で緩和策について問われ「現在の逼迫(ひっぱく)する医療体制に改善の方向性が見られない限り難しい」と強調。昨年は9月の連休後に感染が広がったため「今月どれだけ対策を徹底できるかが山だ」と述べた。

 福岡県の服部誠太郎知事は「行動制限の出口戦略を示すことは重要だが、感染がしっかり抑え込まれ、ワクチン接種が進むことなどが条件だ。感染対策の緩みや、事情があってワクチンを打てない方への圧力、差別につながってはならない。政府は実施に向けてしっかり議論して、我々、自治体とも協議してほしい」とくぎを刺した。【比嘉洋、竹内望、光田宗義】

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