日米地位協定 沖縄・玉城知事「時代の要求にそぐわないものに」

日米地位協定 沖縄・玉城知事「時代の要求にそぐわないものに」

日米地位協定を巡る問題についてインタビューに答える沖縄県の玉城デニー知事=沖縄県庁で2021年9月14日午前11時7分、喜屋武真之介撮影

 全国の米軍専用施設面積の7割が集中する沖縄県の玉城(たまき)デニー知事が毎日新聞のインタビューに応じ、1960年の発効から一度も改定されていない日米地位協定について「人権や環境問題への意識が高まる中で、時代の要求や国民の要望にそぐわないものになっているのは歴然とした事実だ」として抜本的な見直しを改めて求めた。地位協定の運用などを協議する日米合同委員会のあり方についても「何が話し合われたのかも分からない。ブラックボックスの中で、日米の信頼関係が保たれているのか、何ら担保されている証しがない」と透明化を求めた。

【那覇支局/遠藤孝康】

 玉城知事へのインタビュー映像は、毎日新聞社が16日に開催するオンラインイベント「六本木に米軍ヘリが墜ちないために〜不平等な日米地位協定を知る〜」(https://mainichi.jp/articles/20210901/hrc/00m/010/001000d)でも紹介する。

 沖縄では米軍機による日常的な訓練が県民を苦しめている。低空飛行、深夜・早朝の飛行、そして騒音被害……。学校の入試や卒業式などの日に飛行中止を求めてもおかまいなしに沖縄の空を飛ぶ米軍機。2020年末から21年2月には、沖縄本島の西に浮かぶ慶良間(けらま)諸島や沖縄本島北端の辺戸(へど)岬で米軍機による低空飛行が相次いで目撃された。米軍の訓練区域には入っておらず、玉城知事は「米側は『パイロットの習熟度と即応性を保持するため』としているが、低空飛行が(米軍への)提供区域外で行われるというのは、およそ他国では考えられない状況だ。地域住民に大きな不安と恐怖を与えている」と憤る。

 玉城知事が就任して10月で3年がたつが、沖縄県内では米軍による事件や事故、トラブルが絶えず、在日米軍の地位を定めた日米地位協定に関連する問題が派生している。6月には、うるま市の離島、津堅島(つけんじま)の畑に米軍ヘリコプターが不時着したが、現場には、日米が事前に合意したガイドラインに沿って、二重の規制線が張られた。日本側当局が内側の規制線(内周規制線)の中に立ち入り、機体に近寄るには米側の同意が必要とされた。玉城知事は「着陸した場所が民間の土地であるにもかかわらず、米軍側が全てを管理する。(米軍への)提供施設・区域の外での現場の統制や捜索は日本当局の主導で行われるべきだが、それができないのが地位協定の問題点だ」と指摘する。

 一方で、地位協定の問題は事件や事故だけでなく、住民の「暮らし」にも直結している。米軍普天間飛行場(宜野湾市)周辺の湧き水や米軍嘉手納基地(嘉手納町など)周辺の河川からは発がん性が疑われるPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)などの有害物質が高濃度で検出され、県は原因究明のために基地内への立ち入り調査を米軍に申請しているが、米側は調査に応じていない。地位協定上、基地の管理権は米側にあり、環境汚染の問題などで米軍基地の中を「調査したい」と県側が求めても実現には高い壁があるのだ。こうした実例を挙げ、玉城知事は「現実にさまざまな事象が起きているが、それが国会での地位協定改定の議論につながっていない」と語る。

 玉城知事は衆院議員時代に米ハワイ州の海兵隊基地を視察した。基地司令官は「特殊な訓練を行う場合には周辺の住民と協議し、意見を尊重している」と話したという。玉城知事は「正直言って、びっくりした」と振り返り、「そうであれば、日本の海兵隊も地域住民の要望に応じ、基地の運用の改善も行われるべきだ。おそらく日本政府から真剣な提案がされていないのではないか」といぶかる。

 他国の状況を探ろうと、沖縄県は翁長(おなが)雄志知事時代の17年以降、ドイツやイタリアなど米軍が駐留する国に職員を派遣し、米軍との地位協定や基地の運用状況などを調査した。調査によると、ドイツでは航空法などの国内法が原則、米軍にも適用され、夜間の飛行などが制限されていた。イタリアでは米軍基地にイタリア軍の司令官が常駐し、米軍の活動にはその司令官の許可が必要とされていた。「自国の法律や規則を米軍にも適用し、(基地の)受け入れ国が米軍の活動をコントロールできていることが明らかになった」と日本との違いを指摘する。

 こうした沖縄県からの問題提起を受け、全国知事会は18年と20年の2回、「米軍基地負担に関する提言」をまとめ、政府に提出した。米軍機による低空飛行訓練の実態調査や事前の情報提供、地位協定の抜本的な見直しによる国内法の適用などが盛り込まれている。玉城知事は「米軍の訓練区域ではない部分でも実は低空飛行などが行われているという実態が明らかになり、全国の知事の皆さんの『これは人ごとではない』という実感につながったのではないか。沖縄県以外の地方議会でも地位協定の見直しなどを求める意見書が決議されていて、地位協定改定の動きが静かに、着実に広がっている」と語る。

 一方で、日本政府は地位協定の改定には後ろ向きだ。運用の改善や補足協定の締結で問題の解決を図るという立場を取るが、玉城知事は「運用の改善というのは、『米側に好意的配慮を払い、米側の主張をのみ込んでいるだけだ』というようにしか受け取られない事態がずっと続いている」と指摘。日米の協議機関である日米合同委員会のあり方についても「何が問題で、何が話し合われ、どのように解決していくかをオープンにし、住民や自治体はちゃんと運用されているかを見ていく、監視していくことが必要だ」と求める。

 地位協定の抜本的な改定を訴える玉城知事だが、日米安全保障条約を支持する立場に立つ。「我々は反対のための反対を言っているのではなく、地域の住民の安全・安心が担保されることが我々の一番大きな責務だ。日米同盟であれ、地域の安全保障であれ、これから先、どのように安全・安心を構築していけるのか、多方面の切り口で伝えていきたい。国民の皆さんも自分の関心があるところから興味を持っていただければ、日米地位協定の問題を自分事として捉えていく、その大きなつながりになる」と期待を語った。

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