大切な人失った当事者語り合い「心が楽に」 NPO遺族支え愛ネット

大切な人失った当事者語り合い「心が楽に」 NPO遺族支え愛ネット

NPO法人「遺族支え愛ネット」代表理事の京井幹男さん=大阪市中央区で2022年9月6日午後4時11分、川畑さおり撮影

 大切な人との死別を経験した時、人は深い悲しみと喪失感に襲われる。NPO法人「遺族支え愛ネット」(大阪市中央区)は、家族を亡くした当事者たちが気持ちを分かち合う場を設けるなど、悲嘆を抱える遺族の支援に取り組む。代表理事の京井幹男さん(73)は「互いに傾聴し合うことで心が楽になってくる。気持ちを吐き出せる場所が必要だ」と語る。【まとめ・川畑さおり】

 喪失体験を持つ遺族同士が語り合い、支え合う場を提供し、悲嘆を緩和するサポートをしています。活動の中心は月1回の「ささえあい暖話室」です。講師や音楽家の方を招いての講演会や演奏会、5、6人のグループに分かれて話をする「分かち合い」をしています。また、会員が個別に囲碁やボウリング、食事会などを開く「自主クラブ」と称した活動などもあります。

 団体を設立したのは、葬儀会社の「公益社」が行っている「ひだまりの会」のメンバーだった遺族有志です。ひだまりの会は同社が葬儀後のサポートとして始めたもので、遺族同士の交流の場などを提供しているのを参考にしています。私は浄土真宗本願寺派の僧侶で、2013年に講師として招かれて「ささえあい暖話室」で講演したのがきっかけで関わるようになりました。

同じ境遇でわかりあえる

 会員は60〜80代が中心で配偶者を亡くした方が多いですが、みなさん「もう少し何かできたんじゃないか」という自責の念を持つんですよね。私も約30年前に親友を自死で失った時、自分を責めました。当時はショックのあまり体が動かなくなったんです。親友の死は自分の中でなかなか整理できず、15年ぐらいはしんどい時期が続きました。

 活動に初めて参加した時はボロボロ涙を流す方もいるのですが、みんなと語り合っていると何となく心が軽くなる。同じ境遇で、気持ちがわかりあえるというのが大きいです。故人との思い出や看病の経験などみなさん思い思いに話をしますが、話すことで自分の気持ちを整理できる側面もあります。孤独感もあるので、安心して気持ちを話せる仲間を見つけることは大事だと思います。私自身も、活動を通して少しずつ元気になってきたように思います。

 悲しみ、落ち込むことはいけないことだと思っている、その考えをまず壊します。泣いてもいいし苦しんでもいいんだよ、と。よくみなさんが言う「いつまでも泣いていたら亡くなった人が悲しむよ」という言葉はプレッシャーなんです。大切な人が亡くなって苦しまない人間の方が異常です。正常に苦しんだらいいんです。苦しむことは悪いことではありません。

入院、療養を機に

 私は中学1年の時に腎臓病を発症し、入院と自宅療養で1年間学校に行けませんでした。家で寝ている間、生きている意味や将来についていろいろ考えました。哲学の本を読む中で仏教の勉強を始め、50代半ばで得度しました。一般社団法人「日本臨床宗教師会」(仙台市)の会員としても活動しています。11年の東日本大震災を機に養成が始まった臨床宗教師は、布教や伝道を目的とせず、災害被災地や終末期医療の現場で心のケアをする宗教者のことです。

 以前は団体の活動と並行して月1回、三重県の病院の緩和ケア病棟へ通っていました。余命宣告を受けて「死」と向き合う日々を過ごす方たちと接する中で、「死」は当たり前のことなんだと学びました。頭では理解していましたが、なかなか普段の生活で「死」を感じる機会はありません。人間誰にでも訪れる当たり前のことだと実感できました。この経験の前と後で、私自身の団体の活動への向き合い方は変化したと思います。深い喪失感や苦悩を抱えた人に寄り添う姿勢は同じだと思っています。

 人生こうあらねばならない、というのは一つもないというのが仏教の教えです。大切な人を亡くして悲しんでばかりではいけない、前を向かなければいけない、と考えるから余計にしんどい。悲しみは消えません。悲しい時は悲しいままでいいんです。「苦しんでいいんだ」と思って苦しむのと、「苦しんではいけない」と思って苦しむのとでは違います。苦しんでいる自分を認めてあげましょう。そのためにも「安心して悩める場所」を提供していきたいと思っています。

NPO法人遺族支え愛ネット

 2009年設立。現在の会員数は125人。月1回の「ささえあい暖話室」は大阪府立ドーンセンター(大阪市中央区)で開いている。参加費500円。新型コロナウイスル感染拡大の影響で8、9月は中止したが、10月から再開予定。詳細はホームページ(http://www.sasaeai.or.jp)。問い合わせは事務局の電話(080・7710・1026)、もしくはメール(sasae39ai@gmail.com)。

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