熱海土石流 遺族らが32億円の損害賠償求め提訴 「盛り土が原因」

熱海土石流 遺族らが32億円の損害賠償求め提訴 「盛り土が原因」

訴状の提出後、被災現場近くで記者会見に臨む加藤博太郎弁護団長(前列左から2番目)と「熱海市盛り土流出事故被害者の会」の瀬下雄史会長(前列右から2番目)ら原告団=熱海市伊豆山で2021年9月28日午後0時10分、深野麟之介撮影

 静岡県熱海市で7月に発生した土石流災害を巡り、被災者や遺族ら70人が28日、起点となった土地の現・前所有者とそれぞれの会社などに計約32億円の損害賠償を求める訴訟を静岡地裁沼津支部に起こした。原告側は「土石流は明確に『人災』により生じた」「不適切な盛り土が原因」と主張。県警熱海署が現・前所有者に対する告訴状を受理しており、今後は刑事、民事の両面で法的責任の有無が検討される。

 土石流災害は7月3日に発生し、間もなく3カ月を迎える。今月28日時点で26人が死亡し、1人が行方不明のままだ。訴状によると、土石流は起点周辺の土地にあった盛り土のほとんどが崩壊して発生。土地の前所有者は土石流の危険性を認識していたにもかかわらず、排水設備を整えるなどの適切な工法をとる義務を怠ったとしている。現所有者も危険性を認識しながら、安全対策を講じないまま放置したとしている。

 原告側は行政の監督責任を追及するため、県と市の提訴も検討したが、見送る判断に傾いた。これについて、弁護団長の加藤博太郎弁護士は提訴後の記者会見で「行政の自発的な被災者救済と責任の糾明に期待したい」と説明した。

 遺族らでつくる「熱海市盛り土流出事故被害者の会」会長で、母親の陽子さん(77)を亡くした瀬下雄史さん(53)は「全国に危険な盛り土がたくさんある。このような悲惨な『事件』をもう起こしてはいけない」と話した。

 土地の前所有者の代理人弁護士は「訴状が届いてから対応を検討する」、現所有者の代理人弁護士は「県と市の調査結果が出た段階で、責任問題を考えたい」とそれぞれコメントした。

 熱海署が受理した刑事告訴は前所有者が業務上過失致死容疑、現所有者は重過失致死容疑。加藤弁護士によると、さらに10月にも、遺族らが前所有者を殺人容疑で刑事告訴する準備を進めている。【深野麟之介】

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