書家もーちゃん 路上での出会いを糧に 心揺さぶる言葉つむぐ

書家もーちゃん 路上での出会いを糧に 心揺さぶる言葉つむぐ

力強い言葉で人々を元気づける書家のもーちゃん(本名・久保元延さん)=奈良県桜井市で2021年11月15日午後0時14分、廣瀬晃子撮影

 「人生、巻戻しは出来ないけど、巻返しは効くもんだ」。力強い言葉を色紙などに書き、人々を励ましている書家「もーちゃん」こと久保元延さん(33)=奈良県桜井市。心を揺さぶる言葉の数々は、路上での創作経験から生まれた。「自分も言葉一つで人生が変わった。生きづらい人々の救いになればうれしい」

 桜井市出身。書を志すようになったのは高校時代の苦い経験から。野球の素質を見込まれ、大阪の名門校に進学したが、けがのため1年足らずで退部。甲子園を目指し、周囲の期待も高かっただけに、「心に穴が空いたようだった」。自分を鼓舞しようと、ノートの片隅に言葉を書くようになったことが創作の原点だ。

 高3になると、路上での創作活動を開始。道端に作品を並べ、頭に浮かんだ言葉を即興で書いた。人々の反応はさまざまだったが、「『心に染みたわ』と言われる度、うれしくて」。その後、大学に進学するも3カ月で退学し、路上活動を再開。酔っ払いに色紙を踏まれ、難癖を付けられても、地べたに座り言葉を書き続けた。

 特に心に残るのは、ある男性との出会いだ。運転手付きの車に乗り、地位が高そうだったが、地べたに座り、「1日1000回、心の中でありがとうって言うてみ」とアドバイスされた。実行すると、ささいなことでも感謝でき、多くの人から作品を認められるようになった。「考え方一つで好転することを実感した。路上の多くの出会いが生きるうえで大切なことを教えてくれた」

 「次は自分が誰かを助ける番」。悩む人たちに今、届けたい言葉は、人生を変えてくれた「1日1000回、ありがとうと言える人生を」。小さな積み重ねが、幸せを大きくふくらませる。「言葉なんかで変わらないと思う人は、何をしても変わらない。少しの変化が人生を大きく動かすきっかけになるはず」【広瀬晃子】

久保元延(くぼ・もとのぶ)さん

 「もーちゃん」のアーティスト名で活動する書家。現在は全国の商業施設などでパフォーマンスを披露。店舗ロゴやプロスポーツ選手の名前の筆文字デザインも手がけ、10月には奈良県警桜井署の依頼で特殊詐欺防止の啓発作品を制作した。

関連記事(外部サイト)