重症化率低くても起こる医療逼迫 専門医「感染者減らす努力を」

重症化率低くても起こる医療逼迫 専門医「感染者減らす努力を」

岡秀昭教授=埼玉県川越市の埼玉医科大総合医療センターで2022年1月11日午後0時21分、鷲頭彰子撮影

 新型コロナウイルスの感染が急拡大し、流行の「第6波」に入ったとの指摘がある。背景にある変異株「オミクロン株」は重症化率が低いとされるが、医療崩壊を起こす可能性はあるのか。再び緊急事態宣言は必要なのか。万が一、感染したら、どのような点に注意して自宅療養すべきなのか――。埼玉医科大総合医療センター(埼玉県川越市)教授の岡秀昭さん(46)=感染症科=に聞いた。【鷲頭彰子】 

 ――オミクロン株は重症化しにくいと聞きますが、第5波のような医療逼迫(ひっぱく)は起きないでしょうか。

 ◆重症化率が低くなっているのは事実です。ただ、それはデルタ株との比較です。デルタ株と比較して重症化率はおよそ半分程度ですが、インフルエンザより低下しているわけではありません。インフルエンザでも高齢者はこじらせて肺炎になり、人工呼吸器につながれることもありますから油断は禁物です。

 重症化率がデルタ株のおよそ半分であっても、感染者数が第5波の2倍、3倍になれば、同等以上の重症者が発生してしまい、医療が逼迫した第5波と同じような事態になりかねません。少なくとも感染者を第5波の倍以上に増やしてはいけません。

 ――緊急事態宣言のような行動規制は必要になるでしょうか。

 ◆沖縄県では病院内でクラスター(感染者集団)が起き、感染者や濃厚接触者として医療従事者の勤務が困難になっていると聞きます。戦線離脱したことによる人員不足で、病床があっても患者を受け入れられない事態になっており、それは一般医療にも影響します。このようなクラスターが頻発すると医療逼迫が起こりえます。体力のない患者が集まる医療機関でクラスターが起きれば重症者はもちろん死亡者が増える可能性が高くなります。また、介護施設の職員などエッセンシャルワーカーの人手不足も生じ、社会機能が停止する可能性もあります。重症病床の占有率を見て判断するのではなく、感染者数を見ることも重要であり、急激な患者増を避けて、感染者を減らす努力をしなければなりません。

 感染者数の増加に歯止めがかからないのであれば、警報を出す意味で何らかの宣言を出すことは必要になるのではないでしょうか。感染症は人と人との接触で広がっていきます。人流を減らせば減る。医療逼迫をもたらさないためにも、できる仕事はテレワークにする、新年会などは控えるなど各自が予防策を徹底し、協力することが必要です。それでも逼迫の恐れがある場合は、手遅れにならないように適切なタイミングで緊急事態宣言などの発動もやむを得なくなってしまうでしょう。

 ――オミクロン株で軽症者が増え、風邪と同じになったと言う人がいます。

 ◆確かに初期症状は喉の痛みや鼻水など風邪と同じです。検査なしで区別することは困難です。でも、感染力は空気感染する水ぼうそう並みという意見もあるほど強いのです。故に感染が社会に急速に広がってしまいます。風邪ではこのような事態にはなりません。症状が出ている人は症状が治まるまで出勤を停止し、在宅ワークなどに切り替えるべきでしょう。また初期症状は風邪のようで軽症と判断されても、今までの新型コロナウイルス感染症では重症化する人はそこから数日後に悪化していきました。重症者が増えていかないか注意が必要です。

 ――人手不足解消策として、濃厚接触者の待機期間の見直しなどの話が出ています。厚生労働省は濃厚接触者となった医療従事者は、ワクチン2回接種済みの上、毎日の検査で陰性であれば勤務することができるという見解を出しました。どう考えますか。

 ◆感染者が他人に感染させてしまう期間は発症2日前からとされており、院内クラスターが起きる可能性があります。また、医療現場の負担も大きいです。米疾病対策センター(CDC)はワクチンの3回接種を終えている人は濃厚接触者となっても感染予防対策を続けながら、隔離不要としました。それ以外は5日間の自宅待機ののちに検査の陰性を確認することとしています。日本は濃厚接触者は依然14日の自宅待機ですが、人員不足が起きるならば、緩和策が必要と思います。しかし、CDCの推奨でも隔離不要とするには3回接種が前提であり、3回接種していない人は5日の隔離と検査による陰性確認が必要となっています。また緩和策を認めたとしても、感染予防策の継続は必要で、同僚と離れたところでデスクワークや後方支援の仕事をするなど感染症を広めないための工夫をする必要があるでしょう。ワクチンを2回接種しても半年たっていれば予防効果はかなり弱まるとされています。今後、ワクチン・検査パッケージをやるのなら、3回接種か2回接種プラス陰性証明書の提示とするなどの改訂が妥当と考えます。

 ――感染し自宅療養となった場合に不安を覚える人も多いと思います。どのようなことに注意すれば良いでしょうか。

 ◆コロナで最も懸念されるのは肺炎による重症化です。感染しても数日で軽快していくことが一般的ですが、一部は重症化してしまいます。熱が長く続く、息苦しいなど症状が悪化している場合は肺炎になっている可能性が高くなります。在宅診療や保健所などでちゃんと観察できるようになっていないといけません。コロナの肺炎は、息苦しさを伴わず、自覚がないまま悪化していくという特徴もあったため、パルスオキシメーターで血中酸素濃度を測定し、数値で判断することも大切です。オミクロン株はまだ未知なので、同じように重症化しても息苦しさが伴い難いのか不明ですが、これまでと同じ仮定で対策をしておくことが妥当です。重症化リスクがある患者はパルスオキシメーターでの数値管理は可能ならば行った方が良いでしょう。

 今回、感染者が増えても重症者が増えないなど医療逼迫を免れ、オミクロン株による第6波を乗り越えたら、新型コロナとの共生への道が見えてくるかもしれません。恐らく新型コロナは、1度感染または予防接種をすると、生涯にわたってその病気にかからなくなる終生免疫ではなく、インフルエンザのように免疫力が付いても時間がたてば低下していくウイルスなのでしょう。容易に消滅はしないでしょうが、現行のワクチンの副反応を技術開発で軽くし、定期的なブースター接種を行った上で、重症化率も感染力もインフルエンザ程度とすることができたなら、社会経済活動を止めることなく共生が可能となるかもしれません。

岡秀昭(おか・ひであき)さん

 1975年生まれ、東京都出身。日本感染症学会感染症専門医。2000年、日大医学部卒。09年、横浜市立大大学院で博士号取得。神戸大病院感染症内科助教、東京高輪病院感染症内科部長などを経て、17年から埼玉医科大総合医療センター准教授。20年7月から現職。

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