青ざめる軽井沢の住人 宅地開発の樹木伐採で土砂災害へ懸念の声

青ざめる軽井沢の住人 宅地開発の樹木伐採で土砂災害へ懸念の声

不動産業者が宅地開発する予定の原生林=長野県軽井沢町内で2022年3月14日午後2時40分、坂根真理撮影

 新型コロナの感染拡大などで、移住者の相次ぐ長野県軽井沢町では、樹木の伐採を伴う宅地開発が盛んだ。「伐採が土砂災害を引き起こしかねない」「豊かな自然に囲まれた別荘地の風景が様変わりしつつある」と危機感を抱く住民もいる。【坂根真理】

自然は財産、喪失のピンチ

 「すでに山の斜面が崩れ始めているのに、毎年のように樹木が伐採されている。これまでよりもっと大量の樹木が伐採されたら、熱海で起きたようなひどい土砂災害がいつ起きてもおかしくなくなるのでは。とても怖い」

 観光客らでにぎわう旧軽井沢銀座商店街からほど近い山林の中に別荘を構える女性は青ざめる。2021年夏、別荘の背後にある広大な原生林を不動産会社が買い取ったことを知った。大量の樹木を切り倒して宅地を造成するという計画だった。

 女性の別荘は傾斜がある土地の上に建つ。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)や土砂災害警戒区域(イエローゾーン)に囲まれ、ただでさえ土砂災害の発生リスクが高い場所。「大量の樹木の伐採が引き金となり、土砂災害が起きたら大変なことになる」と危機感を覚えた女性は、町役場や県佐久建設事務所を訪れ「森を開発から守ってほしい」と訴えた。

 だが、同事務所などによると、被害を受ける恐れのある建物がある場所を中心に調査して警戒区域を指定するため、原生林は調査の対象外の場合が多く、開発の規制が難しいという。

 女性は「開発でできる宅地に移り住む人は、危険を知らないまま、差し迫る土砂災害のリスクを経験することになってしまう。開発は土砂災害を急がせるだけだ」と憤る。

 町は、こうした開発行為などから自然を守るため、「自然保護対策要綱」を独自に策定。別荘建築などで300平方メートル以上の面積の樹木を伐採する場合は、事業内容などを町と事前協議することを定める。協 議の手続きの中で、伐採した場所に植栽をすることなどを指導したり助言したりしているが、要綱に法的強制力はないため、より強い規制を求める住民も少なくない。一方、町は「樹木は土地所有者のもの」などを理由に規制強化には慎重姿勢だ。

別荘所有者ら、危機感を共有

 「コロナ禍で伐採のスピードが加速している」「クレーンが樹木を根っこから引き抜いていた」

 21年秋、ボランティア団体「軽井沢自然景観会議」が主催するイベントで、軽井沢に別荘を保有する県内外の人や地元住民らが集まり、別荘建築などのために大量の樹木が各地で切り倒されていることへの危機感や課題を共有した。

 このイベントに参加した「軽井沢新聞」元編集長の広川小夜子さんは、「緑豊かな自然は軽井沢の大切な財産なのに失われつつある。町の要綱も罰則がないため限界がある。開発を規制しない限り、森は破壊され続けていく」と警鐘を鳴らした。

関連記事(外部サイト)