橘慶太税理士の相続コラム@財産管理を任されたら、必ず帳簿付けを!

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表参道相続税専門税理士事務所     橘慶太税理士の相続コラム

初めまして。相続税専門の税理士の橘と申します。

私はこれまで200件以上の相続税申告を手掛け、3000人以上の方の相続のご相談を受けてきました。その中には、ご家族の中に認知症やMCIを発症している方もたくさんいらっしゃいました。ご家族の中にそのような方がいる場合には、予期せぬところでお金のことや家族仲のことでトラブルに陥ってしまうケースが後を絶ちません。

私がこれから書いていく記事は、全て事実に基づいた事例をお伝えしていきます。まずはどのようなトラブルが世の中で起こっているか、そしてその対策を知っていただくことによって、皆様のお役に少しでも立てれば幸いです。


ご家族の中に認知症やMCIの方がいる場合、その方の介護をするために、お子様がその方の財産の管理を任されることがあります。例えば預金通帳やキャッシュカードをお子様に預け、暗証番号もそのお子様に伝えているような形です。

軽度の認知症の場合などには、この形をとられるご家族は非常に多いですが、実は、この形、後々トラブルになることがとても多いのです!!

あるところに認知症の母と3人の姉妹がいたとします(父は既に他界)。長女は母と同居しており、二女と三女はそれぞれ嫁いでおり、遠方で暮らしていました。長女は母の介護をするため、母の通帳から現金を引き出し、食費や医療費等々をそこから支払っていました。

そのような生活が何年か続き、母は他界しました。

通夜や葬儀などが一通り終わり、3人の姉妹が母の遺産について話し合いをすることになりました。長女が母の預金通帳を二女と三女に見せると、二人は驚いた様子でこう言います。「え!お母さんの預金残高がこんなに少なくなっているのはおかしいわ!!」
長女は、母の預金を母の医療費や食費で使ったと説明しますが、まったく信じてくれません。

二女「お金がかかったのはわかるけど、こんなに少なくなるはずないでしょ!!!」
三女「さては、あなた現金で引き出してネコババしたでしょ!!隠しているお金出しなさいよ!!」
長女「何よ!あなたたち、母さんのお世話を全て私に押し付けたくせに!ネコババなんてしてないわよ!」

このようなメカニズムで相続争いに発展するケースは、非常に多いです。これは大袈裟に言っているわけでは決してありませんが、相続争いになる原因ランキングがあるとすれば、1位か2位にランキングしてくるはずです。

私はこれまで、上記のケースでいうと長女側(財産を管理を任された側)の相談に乗ったこともあれば、二女三女側(財産の管理を任せた側)の相談に乗ったこともあります。

これまでの私の経験則ですが、実は、長女側がお母様の生活費以上にお金を引き出してしまうケースは存在します。しかし、これには長女さんにも言い分があるのです。
「母の生活をサポートするのは毎日本当に大変で、とても辛いです。なのに、遺産は平等に分けなきゃいけないなんて納得いきません!!」

このような気持ちから、母の生前中にお金を多めに引き出して、現金で隠してしまうケースは実際に存在します。(もちろん、そうではない場合もたくさんあります)

このようなトラブルにしないために、一番良い方法は、帳簿を付けることです。形は自由ですし、簡単なもので結構です。

例えば、一冊のノートを買ってきて、母の預金通帳からお金を引き出したら、左のページの上の方に引き出した金額を書きます。次に、母の医療費や食費でお金を使ったなら、その時の領収書を、ノートの右ページに貼り付けます。そして左のページには使ったお金を記載していきます。

この作業を繰り返していけば、母の通帳から引き出したお金を何に使ったかが明確になります。

財産管理と帳簿付け

 

仮に、入出金の全てを明確にできなくても、明確にしようとしていた姿勢は伝わります。この姿勢が伝わるだけでも、トラブル防止には大きく効果を発揮します。

なお、このような形ではなく、第三者の中立な立場の人に財産管理をお願いしたい場合には、また別の記事でご紹介しますが、後見制度を利用する方法もあります。後見制度を利用するまでにはいかないという方であれば、帳簿を付けることだけでもいいかと思います。

相続税の申告をすると、その後5年間、相続税の税務調査として、自宅に税務署の調査官がくることがあります。相続税の税務調査は所得税や法人税の調査と異なり、かなり高い確率で行われています。どれほどの確率かというと、約20%〜25%。つまり四人に一人か五人に一人の確率です。また、一度、税務調査が行われると82%の確率で追徴課税になっています。

相続税の税務調査と聞くと、家の中を家宅捜索されるイメージをお持ちの方が多いですが、実は違います。税務調査で見られるのは、亡くなった方の過去10年間の預金通帳です。(何故10年間かというと、銀行は10年間しか取引履歴を保管できないからです)

相続税を少なくしたいと考える人が取る行動は、実は、皆さん同じです。「亡くなった時の預金残高に相続税がかかるなら、生前中に引き出して現金で隠してしまえ!」とか「生前中に子供の通帳に振り込んでしまえ!」など、とにかく預金残高を少なく見せようとします。

そのような形で相続税を不当に少なくしていないかをチェックするために、税務署の調査官は過去の取引履歴を細かくチェックするのです。

そうすると、亡くなった方の過去の預金通帳から多額の引き出しがあったりすると、「生活費にしてはこの引出は多いですよねぇ。差額はどこかにありませんか?」と言われることがあります。

こういった指摘を受けてしまうと、税金の問題だけではなく、上記のネコババ疑惑問題にまで飛び火してしまう恐れがあるのです!そういった事態にならないようにするためにも、財産の管理を依頼された場合には、家族の間であっても、帳簿を付けることが大切なのです。

〜まとめ〜

ご家族のためを想って財産の管理を引き受けたのに、あらぬ疑いをかけられたり、税務調査で恐い思いをさせられたりと、散々な目に合ってしまう方がたくさんいます。

しかし、こういったトラブルは帳簿をつけるだけで、回避できる可能性が大幅に上がるのです。

これまで帳簿を付けてこなかった方は、過去の分を明確にするのは中々難しいと思います。しかしながら、これからの分については今からでも始められます。他のご兄弟はあなたのことを疑っているわけではありません。ただ、現金というのは何に使ったかがわからなくなるため疑心暗鬼になってしまうのです。

是非、円満な家族仲を守るためにも、財産管理を任されたら帳簿を付ける!ということを実践してください。

※橘先生のコラムへのリクエストや質問はこちらのフォームにて受け付けています!題名に「相続コラム」と書いてお送りください。

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