認知機能の衰えの自覚や歩行速度の低下が、認知症の早期発見につながる可能性

認知機能の衰えの自覚や歩行速度の低下が、認知症の早期発見につながる可能性

認知機能の衰えの自覚や歩行速度の低下が、認知症の早期発見につながる可能性

健康診断の問診票の中に、「同年代の人と比べて歩く速さが遅いですか?」といった質問をご覧になったことはありませんか? 歩行速度は体内に酸素を取り入れる能力と相関があり、将来の循環器病や生活習慣病の発症リスクに関連すると考えられています。

今回は歩行速度の低下など運動機能の低下が、認知症の早期発見につながる可能性を調べた論文をご紹介します。

認知症を発症する以前に、歩く速さが遅くなる傾向があることが報告されています。そのため、歩行速度を測定することで認知症を早期に予防、発見できる可能性があります。特に、高齢者の認知機能の衰えという自覚症状や歩行速度の低下を判断基準として、アメリカのアルバート・アインシュタイン医科大学のVerghes博士らが定めたのが「運動性認知リスクシンドローム(MCR)」です。

MCRと認知症との関係を調べるために、研究チームは4つの独立した調査から60歳以上の3128人について、認知機能の低下や歩行速度などのデータを解析しました。平均して3年の追跡調査を行い、3128人のうち、823人が調査期間中にMCRと診断されました。

MCRと診断された823人のうち、その後認知症を発症したのは136人(22.1%)、MCRのままだったのは354人(57.5%)、そして125人(20.3%)はMCRから回復しました。

次に、MCRと関連が強い要素について解析を行いました。その結果、高齢になるほどMCRになりやすいことがわかりました。性別は特に関連性がありませんでした。また、生活習慣についても解析したところ、肥満や座ってばかりの生活ではMCRになりやすい傾向があることがわかりました。

病気との関連を調べたところ、心臓疾患や高血圧との関連性は低いことがわかりました。しかし、脳卒中やパーキンソン病、うつ病ではMCRになりやすいことがわかりました。

以上の結果から、高齢になると認知機能の衰えの自覚や歩く速度の低下として表れるMCRになりやすく、また、肥満や脳卒中、あまり動かない生活を送っているほどMCRになりやすいことがわかりました。MCRになると、その後、認知症になりやすい傾向があるためこのような症状がある人は注意が必要です。

今回の研究では、MCRから認知症に至った人の割合と同じくらいの人が、MCRから回復したという調査結果が出ています。これは、軽度のMCRであれば生活習慣や運動習慣によって、改善できることを意味します。認知症に至る前段階で、早目にこのような症状に気づくことができれば、効果的に認知症発症のリスクを抑えることができるかもしれません。今後、MCRについてさらなる大規模な調査が行われることを期待します。

▼ご紹介した論文
Motoric cognitive risk syndrome: Multicenter incidence study.
Verghese J. et al. Neurology. 2014 Dec 9;83(24):2278-84.

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