腸内細菌と認知症との関係を調べた研究

腸内細菌と認知症との関係を調べた研究

腸内細菌と認知症との関係を調べた研究

私たちの体にはたくさんの菌が住んでいます。「腸内細菌」とは腸に住んでいる菌の総称で、その数はおよそ100兆個、2000種類 にもなるといわれます。どんな種類の菌がどれくらいいるのかといった「細菌組成」は年齢とともに変化し、また、食生活によっても大きく変わります。

今回は、腸内細菌組成と認知症の関係を調べた論文をご紹介します。

国立長寿医療研究センターの研究チームは、この度、認知症患者の腸内細菌組成について調査を行い『Scientific Reports』に発表しました。腸内細菌は主に大腸など、腸に住みつく菌の総称です。お腹の調子に関わるだけではなく、最近は、肥満や免疫、心疾患や脳疾患など、体の様々な健康に関わることが明らかになっています。

研究チームは外来患者さん128人(平均年齢76歳)の腸内細菌組成を調べ、認知機能との関係を解析しました。その結果、認知症と診断されたグループと、認知症ではないグループとでは腸内細菌組成に違いがあることが分かりました。

まず認知症のグループでは、「バクテロイデス門」といわれる種類の菌の割合が低い人が多いことが分かりました。一般的に、この種類の菌の割合は高齢になると高くなることが報告されています。バクテロイデス門の菌が30パーセント以上を占める組成を「エンテロタイプI」といいます。認知症ではないグループではエンテロタイプIが約44パーセントを占めるのに対して、認知症のグループでは約14パーセントでした。

成人では腸内組成のほとんどは、「フィルミクテス門」に属する菌が占めています。フィルミクテス門とバクテロイデス門の菌の割合(フィルミクテス門/バクテロイデス門)を比較したところ、認知症のグループでは、認知症ではないグループよりもこの値が高くなることが分かりました。

また、認知症のグループのほうが、いわゆる「乳酸菌」とよばれるラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属に属する菌の割合が多いことも分かりました。

以上のことから、認知症の人ではエンテロタイプIが少なく、またラクトバチルス属やビフィドバクテリウム属の菌が多いなど、腸内細菌組成に特徴があることが分かりました。

認知症の人が特徴的な腸内組成を示す仕組みや理由は、明らかではありません。腸内組成の変化が認知機能に影響しているのか、それとも認知機能の変化が腸内細菌に影響するのかについても、これからの研究が待たれるところです。

私たちが健康に過ごすために大切なのは、腸内細菌の組成バランスです。たとえ体にとってよい働きをする菌であっても、その菌だけがやたらと多ければ健康とは言えません。理想的なバランスのとれた腸内組成を生み出すのは、やはり食事です。腸内細菌組成は年を取るほど個人差が大きいことが報告されており、長年の食習慣や生活習慣が、大きく関わっていると考えられます。バランスのとれた、多種類の材料から成る食生活を送っている人ほど、多様な腸内細菌をもち、とくに、野菜や果物などの食物繊維の豊富な食生活を送っている人は、腸内細菌も多くの種類の菌からなるそうです。腸内環境を整えるためにも、今一度、日ごろの食事を見直してみてはいかがでしょうか?

▼ご紹介した論文
Analysis of the relationship between the gut microbiome and dementia: a cross-sectional study conducted in Japan
Saji N et al., Scientific Reports (2019) 9:1008

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