山口先生コラム「やさしい家族信託」第8回:高齢者詐欺が増加中。自分のお金がおろせない!?ATMが苦手なお母さんのためにできること

山口先生コラム「やさしい家族信託」第8回:高齢者詐欺が増加中。自分のお金がおろせない!?ATMが苦手なお母さんのためにできること

山口先生コラム「やさしい家族信託」第8回:高齢者詐欺が増加中。自分のお金がおろせない!?ATMが苦手なお母さんのためにできること

司法書士事務所ともえみ 代表司法書士 山口先生コラム「やさしい家族信託」

厚生労働省によれば、2025年には認知症患者が700万?になると?われています。認知症になると資産は凍結され、?分や家族のために財産を動かすことができなくなります。

本コラムでは、「職業後見人」として高齢者の方の財産を管理し、また、自身の両親の「家族信託受託者」としても活動する高齢者支援専門の司法書士である山口良里子先生が、認知症から?切な資産を守るために注?される「家族信託」についてわかりやすく解説します。


全国で高齢者の詐欺被害が増加しています。

警察庁によると、平成29年のオレオレ詐欺など特殊詐欺の被害額は394.7億円。中でも、高齢者の被害割合は全体の72.5%と非常に高くなっています。

注意喚起の呼びかけのCMなども制作され(防サギムービー)、被害を水際で防ぐための取り組みが強化されています。

各金融機関は、高額の取引をする高齢者には積極的に声掛けをし、使途に疑義がある場合は、警察へ通報することもあるそうです。また、高齢者のキャッシュカードの振込上限額を設定したり、引き出し額の上限を設定する金融機関もでてきています。

実際、高齢者支援を専門とする弊所へも「〇〇さんが、銀行の窓口で多額のお金を振り込もうとしている。御社のお客さんだと言っているが状況確認をさせてもらいたい。」と、警察から連絡がくる事態も発生しています。

ほとんどの方は、利用目的があり、認知機能にも問題ないので、「自分のお金なのにどうしてすぐおろせないの」「ボケてないのにボケ扱いされた」などと、お怒りになられます。

しかし、そこまでしても被害が減らないほど、詐欺犯罪の手口が巧妙化しているのが現実のようです。

花子さんは、今年、53歳。実家の近くにサラリーマンの夫と2人で暮らしています。一人娘がようやく結婚し、今から孫の顔をみるのを楽しみにしています。

心配なのは、もうすぐ80歳のお母さんのこと。

花子さんの家から車で15分のところに1人で住んでいるのですが、一人暮らしの高齢者がオレオレ詐欺などの被害にあうというニュースをみてハラハラしています。

娘からも、「高齢になると、判断能力の低下がおこり、騙されやすくなるから、おばあちゃんをちゃんと見張ってあげないとだめよ。」と偉そうに言われたり。

そんな時、警察から「〇〇さんの娘さんですか?今、お母さんが銀行の窓口で多額の現金を出金しようとしているのですが状況確認をさせてもらいたい。」と、電話がかかってきたのです。

驚いて銀行に駆けつけると、お母さんは、銀行の担当者と警察の方に囲まれて別室でちょこんと座っていました。

お母さんの話はこういうことでした。

・銀行の窓口が家の近くになくなったので、わざわざ駅前の窓口まで歩いて行かないといけなくなった
・キャッシュカードを使って、家の近くのコンビニでお金をおろそうとしたが、ATMの使い方が分からない
・最近、膝が痛くて、駅前まで歩くのが大変なので、まとまったお金を手元に置いておこうと思った

お母さんがオレオレ詐欺にあっているのではないと分かり、花子さんは一安心。

とはいえ、家に500万円もの現金を置いておくのは危険です。ひとまず、10万円だけおろして、家に帰ることにしました。

銀行の担当者や警察の方にもお礼を言うと、「最近は、振込詐欺の手口も巧妙化しているから、銀行も警察も慎重に動いているんです。お時間とらせてごめんなさいね。」と言ってくれました。

【よくある高齢者詐欺の手口】
・ATMに高齢者を呼び出して、振り込ませる(振り込め詐欺)
・暗証番号を聞き出した上で、キャッシュカードを手渡しさせる (キャッシュカード手交型詐欺)
・事前に電話をしてから、家に置いてある現金をとりにくる(アポ電詐欺)

【金融機関で行われている対策】
・窓口やATMで、高額の取引をする高齢者には積極的に声掛け、使途に疑義がある場合は、警察へ通報する
・一定の条件※に当てはまる高齢者のキャッシュカードの振込額や、引き出し額の上限額を設定する
※70歳以上かつ過去3年間、ATMでの取引がない場合など

今回の騒動で、花子さんは、いよいよ、高齢のお母さんのお金の出し入れについての自分たちでも「防サギ」対策をしておかないといけない思ったのです。

問題点対策高齢者詐欺が心配・キャッシュカードの振込や出金限度額を低く設定しておく
・生活費用の普通預金口座の残高を少なくしておく
・家にまとまった現金を置かないようにするATMが苦手・膝が痛くて窓口まで行けない・生活費の支払いなどを自動引き落としにしておく
・花子さんが月に1回、お母さんの代わりにお金をおろして届けてあげる(お母さんの体調の変化の見守り)

さらに、お母さんが認知症になってしまったあとや、まとまったお金が必要になったときでも、花子さんがお母さんの代わりにお金の出し入れをしてあげられるように、「家族信託」もしてくことにしました。

・銀行でのお金の引き出し、支払いや振込、定期預金の解約
・株や投資信託、外貨預金の売却や換金
・不動産の売却、修繕、リフォーム、賃貸、管理
・介護や医療、施設の費用などの支払い

≪信託契約の内容≫
委託者(財産を託する人):お母さん
受託者(財産を託される人): 花子さん
受益者(信託の利益を得る人):お母さん
信託財産(預ける財産):@今住んでいる自宅 A500万円
信託の目的:お母さんの安心な老後の生活を実現すること
 受託者の権限:実家の管理、売却、売却代金の管理、お母さんの生活・介護・医療費の支払い
信託終了時:お母さんが他界したら終了する
      すべての財産を換金して、花子さんへ引き継ぐ

≪メリット≫
@お母さんが手元に置いておこうとしていた500万円を安全に保管できる
Aお母さんに大きなお金が必要になった場合も、花子さんがお金を届けてあげられる
Bお母さんが認知症になった後も、資産は凍結せず、花子さんが契約内容に従って財産管理をすることができる
Cお母さんが施設へ入居して、実家が空き家になった場合、花子さんが実家を売却して介護費用に充てることができる
D花子さんは、お母さんの資産を預かっているだけなので、「贈与税」がかかることはない
E「任意後見人」や「法定後見人」とは違い、家庭裁判所の関与がないため、月々の費用がかからない
F信託財産の信託終了時(お母さんが他界した時)の扱いについてまで、契約で定めておけるため、お母さんが他界した時に資産が凍結して葬儀費用がだせずに困ったということがない
Gお母さんが詐欺被害にあうかもしれない心配、自分でお金がおろせない心配、認知症になって口座が凍結するかもしれない心配がなくなったので、花子さんもお母さんも安心して生活を送れるようになる

花子さんのように、親が認知症で判断能力が低下する前なら、「家族信託」を使うのか、それともこのまま何もしないのかを比較検討することができます。

せっかく老後の資金にとためておいたお金が詐欺にあっては大変です。

「家族信託」をしておけば、親の財産を「子どもへの信託口口座」で安全に保管・管理することがきます。さらに、体調の変化や認知症などで、銀行の窓口でお金の出し入れが出来なくなった親の代わりに、いつでもお金を出し入れしてあげることができるのです。

そうすることで「親が銀行の窓口までいけなくなって、お金がおろせなくたらどうしよう・・・」とか「親が窓口へ行って自由にお金をおろせるのは嬉しいものの、詐欺被害にあったらどうしよう・・・」など、相反する2つの不安から開放され、元気な親をやさしく見守ることができるようになります。

親の「防サギ」が気になりだしたら、「家族信託」で、今のお金の出し入れと将来のお金の出し入れについての対策をスタートしてはいかがでしょうか。


「家族信託」とは、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。本コラムの著者は、一般社団法人家族信託普及協会の認定家族信託専門士です。
参考:警察庁 平成29年の特殊詐欺認知・検挙状況等について
参考:政府広報オンライン「特集 やらなくちゃ!防サギ」

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