前頭側頭型認知症の解明に向けた研究成果が発表されました

前頭側頭型認知症の解明に向けた研究成果が発表されました

前頭側頭型認知症の解明に向けた研究成果が発表されました

前頭側頭型認知症は、大脳の前頭葉と側頭葉の神経細胞が徐々に減る、萎縮する(縮む)ことにより、様々な症状が現れる病気です。原因は、まだはっきりとは分からないのですが、脳の神経細胞にあるタウたんぱく質という物質が影響していると言われています。

前頭葉は、人格、社会性、言語を支配し、側頭葉は、記憶、聴覚、言語を支配しています。

そのため、前頭葉と側頭葉がダメージを受けると、以下のような症状がみられます。

1)人格の変化・社会性の欠如・抑制がきかない
礼儀やマナーを無視する、衝動的に行動する、周囲の目を気にしない、暴力をふるう、度を越した悪ふざけをする、身だしなみに無頓着になる、万引きをする、など
2)行動障害:同じ動作を繰り返す、同じ道を同じ順路で歩く、毎日同じ食事に固執する、など
3)人の気持ちが分からなくなる、感情移入しない、無関心、無気力、など
4)言語の障害:自分から話さない、オウム返しをする、同じ言葉を繰り返す、会話のつじつまが合わない言葉を突然言う、物の名前が言えない、など
5)体が動きにくくなる
6)記憶力は比較的保たれている

また、40〜60歳代で発症することが多いと言われています。行動がおかしいな?と気づいていても、もの忘れがみられないことから「まさか認知症とは思わなかった」ため、受診が遅れてしまい、適切な治療が行えない場合があります。

働き盛りの年代での発症による経済的負担、親が発症したことにより子どもが親の介護を担うヤングケアラー、ダブルケア(要介護者が複数存在している)など介護の環境が複雑化します。

前頭側頭型認知症は、欧米では30〜50%が家族歴を認めますが、日本ではほとんど認めません。しかし、一部の遺伝子異常により遺伝するタイプもあります。

今回、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構・学校法人順天堂 順天堂大学・国立研究開発法人日本医療研究開発機構では、単一の遺伝子異常により、タウたんぱく質が脳の中に溜まる遺伝性の前頭側頭型認知症の患者に、タウたんぱく質を可視化するPET(陽電子断層撮影法)を用いて、タウたんぱく質が溜まる脳の部位と量を調べました。

その結果、遺伝的素因がよく似ていても、家系によって病気の進行の速さには個人差が大きいことが分かりました。病気の進行が緩やかな家系においては、タウたんぱく質が溜まる部分は脳の一部に限られており、溜まる量も比較的少ないことが分かりました。一方、病気の進行が速い家系は、脳の広い範囲にタウたんぱく質が溜まっていることが明らかになりました。

この結果より、認知症や神経難病での病態の解明や、診断・治療の発展につながると考えられています。特に、若年で発症することから、早期発見・早期治療につながり、患者に適切な治療が行えます。そして、家族の介護や適切な介護サービスの利用を行いながら、その人らしく生きられる生活環境を整えることにつながります。

今後、病態の解明や診断・治療に向けて一層の発展が期待されます。



出典:1)国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構,学校法人順天堂 順天堂大学,国立研究開発法人日本医療研究開発機構.“若年での発症例が多い遺伝性認知症で起こる脳内異常を解明―脳内タウ病変を標的に、早期診断と治療薬開発促進につながる成果―”.国立研究開発法人日本医療研究開発機構(2019年6月18日アクセス)

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