認知症でも楽しく前向きに生活するためには?

 認知症と聞くと、「自分が自分でなくなってしまう」「今までの記憶を忘れてしまう」「家族に迷惑をかけたくない」など否定的な感情を抱く人がいらっしゃると思います。しかし、山口晴保医師(認知症介護研究・研修東京センター センター長)は、認知症を抱えながらも楽しく前向きに生活するために「脳活性化リハビリテーションの5原則」??を提唱しています。

今回は、脳活性化リハビリテーションの5原則についてご説明します。

脳活性化リハビリテーションの5原則とは、認知症になってもできることに目を向けて、できることを活かして楽しいことをしながら本人の残存機能(残っている機能)をさらに伸ばしていくという考え方です。

(1)快―笑顔―
(2)双方向コミュニケーション
(3)役割
(4)ほめ合い
(5)失敗を防ぐケア
の5つです。

快とは、気持ち良い・心地よい・楽しい・好きと感じることです。認知症の場合、その時を本人が楽しく笑顔で過ごせることが大切です。介護者も笑顔で接すれば、笑顔が返ってきます。

認知症本人と介護者(介護する側)のお互いのコミュニケーションが大切です。認知症の場合、コミュニケーション能力が低下するため、その人に合わせた話し方や接し方が必要となります。認知症の方が間違ったことを話しても、まずは受け止めることが大切です。

認知症になると、できることが減っていくと思われるかもしれません。そのため、介護者が何でもしてしまうのではなく、認知症であっても、日々の生活の中でできることはあります。できることを続けることで、社会の一員としての役割や責任をもち、生きがいにつながります。

誰でもいくつになってもほめられたり、「ありがとう」と感謝されることは嬉しいです。認知症によって、もの忘れが増えたり、今までできていたことができなくなると、落ち込んだり自信を失うこともあります。しかし、認知症の人も介護者もお互いほめあう・感謝の気持ちで「ありがとう」と言い合うことで共に笑顔になり、元気になります。

誰でも失敗すると落ち込みます。認知症の人は今までできていたことができなくなる、失敗が増えることが多くなり、注意されることが多いです。しかし、介護者は失敗する前に先回りをして、さりげなく認知症の人にやってもらうように促しましょう。

快の実践として、お化粧やおしゃれをして外出したり、好きな歌を歌う、介護者と一緒に買い物に行く、料理を作るなどその人の好きなこと・楽しいことを一緒にしてみましょう。また、「今日は何をしたいですか?」と主体的に取り組めるように促すことも大切です。

ほめることが苦手な人の場合、「何をほめたら良いんだろう?」と悩む方もいらっしゃるかもしれません。そんな時は、「ありがとう」の一言を言ってみましょう。また、誰かが嬉しそうな顔をしていれば、自然と笑顔がこぼれたり、一緒に喜んだりしますよね。無理してまで笑顔を作る必要はありませんが、日常のちょっとしたことを楽しむ気持ちで過ごしてはいかがでしょうか。

役割というと、大げさに感じてしまうかもしれません。例えば、結婚後毎日料理を作っていたという方が認知症になったとします。介護者は「危ないから」「何かが起きたら大変だから」という認知症の人を守る理由で、台所に入らないようにする場合があります。包丁で怪我をしたり、火事にならないように避けることも大切ですが、「味見してみて」や「テーブル拭いてもらえる?」などできることをやってもらいましょう。役割があると、頼られている嬉しさや、「頑張ろう」という意欲につながります。

認知症であっても、ポジティブに生活するためには、笑顔とお互いの思いやりが大切です。できないことに目を向けるのではなく、できることを続けていくことで社会の一員としての責任や役割を担います。その結果、生きがいにつながります。

介護者は、うまくいかない日や心に余裕のない時もあります。笑顔でいられる時間も少ないです。しかし、少しの時間でも口角を上げて笑顔になりましょう。そこから気持ちを切り替えて、ポジティブな介護を始めましょう。

参考文献:1)山口晴保 認知症ポジティブ 脳科学でひもとく笑顔の暮らしとケアのコツ 共同医書出版社,2019,P174-178
2)山口晴保 認知症の脳活性化リハビリテーション 老年期認知症研究会誌,2011,vol18,p133-139,(2019年8月9日アクセス)

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