山口先生コラム「やさしい家族信託」第17回:Q&A 外出自粛で、認知機能の低下が心配。家族信託、遺言、後見、今できることが知りたい

山口先生コラム「やさしい家族信託」第17回:Q&A 外出自粛で、認知機能の低下が心配。家族信託、遺言、後見、今できることが知りたい

山口先生コラム「やさしい家族信託」第17回:Q&A 外出自粛で、認知機能の低下が心配。家族信託、遺言、後見、今できることが知りたい

司法書士事務所ともえみ 代表司法書士 山口先生コラム「やさしい家族信託」

厚生労働省によれば、2025年には認知症患者が700万?になると?われています。認知症になると資産は凍結され、?分や家族のために財産を動かすことができなくなります。

本コラムでは、「職業後見人」として高齢者の方の財産を管理し、また、自身の両親の「家族信託受託者」としても活動する高齢者支援専門の司法書士である山口良里子先生が、認知症から?切な資産を守るために注?される「家族信託」についてわかりやすく解説します。


新型ウィルスの流行で、外出を自粛している親の認知機能の低下が心配で、「認知症ねっと」で情報を収集しはじめました。認知症になると、医療や介護の対策だけでなく、お金の管理や財産の処分の問題もでてくる。「家族信託」という制度が、高齢期の親のお金の管理に使えるということが分かりました。ただ、まだまだ元気な両親にいきなり何か法律の手続きをしておけとも言えません。時間のある今のうちにできることを整理して、家族で話し合っておきたいのですが、高齢期の親のお金を守るために何をしたらいいのか教えてください。

新型ウィルスの流行で、全国的に外出が自粛され、家族での時間が増えた方が増えているようです。そのため「親の体調の変化やこれからのことが気になりだした」、「実際に親の認知機能が低下しているようで心配だ」という声も聞かれます。

まずは、健康第一。外出自粛中も、できるだけ普段どおりの生活のリズムを維持し、運動や栄養に気をつけることで、体力や認知機能の低下を防ぎましょう。その上で、ご質問をいただいたA子さんのように、高齢期の親のお金を守るために使える制度について確認しておかれることも大切です。使える制度には、それぞれ、使えるタイミングがあるからです。

高齢期の親のお金を守るための使える制度の代表的なものに、「家族信託」「遺言」「任意後見」「法定後見」の4つがあります。

このうち、「親が元気なうち=親の判断能力が低下する前」に、将来、親の体力や認知機能低下、他界に備えて、親自身のお金の管理・処分のあり方を決めておくのが、「家族信託」「遺言」「任意後見」の3つです。

そして、すでに親の判断能力が低下してしまい、親自身が自分の将来のことについて決められない場合に使えるのが「法定後見」です。

元気なうち(判断能力低下するまえ)判断能力低下したあと家族信託 遺言 任意後見法定後見

質問者A子さんのご両親のように「高齢だけどまだまだ元気」であるならば、「家族信託」、「遺言」、「任意後見」を選んで、使うことができます。しかし、何もしないままご両親の能力が低下してしまったら、選べる制度は、「法定後見」しかないということになります。

「家族信託」「遺言」「任意後見」は、「親が元気なうち=親の判断能力が低下する前」に、親自身のお金の管理・処分のあり方を決めておくという点は同じです。

これら3つの制度の違いは、取り決めの効果が「いつ」「何に対して」発揮されるか、「裁判所の監督があるかないか」という点です。

「家族信託」は、契約締結後すぐ~親が他界した後、その次のことまで効果が続きます。効果の続く期間は長いですが、信託契約で取り決めた「一部の財産」の管理しか行うことはできません。

一部の財産の管理・処分を家族に任せるという家族間の契約であるため、裁判所の監督は、ありません。

「遺言」は、作成後〜親が他界するまでは効果を発揮しません。親が他界したスポット的なタイミングで、親の残した全財産(遺産)を誰にどのように引き継ぐか決めておけるという効果を発揮します。

親が他界時のスポット的なタイミングでしか効果を発揮しないため、裁判所の監督はありません。

「任意後見」は、契約締結後すぐ〜親の判断能力が低下するまでは効果を発揮しません。本当に必要になった時、親の判断能力が低下したタイミングから親が他界するまでの間で、親の全財産を管理することができるという効果を発揮します。

さらに、親の判断能力が低下したら全財産を管理できるだけでなく、施設への入居契約や、入院、介護の契約など、身上監護についても、本人に代わって行うことができるという権限が与えられます。

このような重大な権限が与えられることから、任意後見人には、裁判所の選んだ「後見監督人」がつくことになり、後見監督人への報酬も必要になります。

以上のように、「親が元気なうち=親の判断能力が低下する前」なら、親自身のお金の管理・処分のあり方を決めておくことができます。

このうち、最も効果が長く続き、裁判所の監督もない(費用も安価)なのが「家族信託」であるといえます。そこで、高齢期の親のお金を守る対策は「家族信託」から検討を始めることをお勧めします。

ただし、それぞれのご家族ごとに@家族の状況 A財産の状況 B叶えたい希望は異なります。家族信託より遺言や任意後見の方があっている場合や、すべてを組み合わせて利用される方がよい場合、そもそも何も必要ないという場合もありえます。

(詳しくは、コラム11回我が家に家族信託は必要か?、12回我が家に家族信託ができるか?をご覧ください。)

外出自粛で、家族の時間が多く取れる今こそ、家族で、家族のこれからを整理して、何がおこってもみんなが安心して暮らせる備えをしておきましょう。

#main table td { text-align: center;} 元気なうち 判断能力低下後 家族信託 遺言作成 任意後見 法定後見 どうやってする? 家族と契約する ひとりでできる 家族又は専門家と契約する 裁判所が決める 効果は? 財産の管理と引継ぎ 財産の引継ぎ 財産の管理と身上保護 財産の管理と身上保護 効果期間は? 元気なとき 〇 × × × 体力が低下 〇 × × × 判断能力が低下したとき 〇 × 〇 〇 他界したとき 〇 〇 × × その先 〇 × × × ランニングコストは必要? 後見監督人等への報酬 不要 不要 必要 必要 裁判所の関与は? 不要 不要 必要 必要   財産の範囲は? 一部 全部 全部 全部   話しやすさ 話しやすい 話しにくい 話しにくい 話しにくい

〇ポイント
本人が元気な(判断能力がある)うちなら、「家族信託」「遺言」「任意後見」を選んで使える。それぞれの家族の実情に応じた制度を選んで、使うのが重要。



「家族信託」とは、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。本コラムの著者は、一般社団法人家族信託普及協会の認定家族信託専門士です。
本コラムで紹介する事例は、フィクションです。実際に家族信託をご検討される場合は、専門家へご相談ください。

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