【王将戦】藤井聡太4冠が5冠へ先勝 渡辺3冠“ホーム”掛川の合戦制す

【王将戦】藤井聡太4冠が5冠へ先勝 渡辺3冠“ホーム”掛川の合戦制す

7番勝負第1局で渡辺明王将に勝った挑戦者の藤井聡太竜王(代表撮影)

将棋の史上最年少4冠、藤井聡太竜王(王位・叡王・棋聖=19)が王将初奪取と5冠獲得に好スタートを切った。9日午前9時からの2日制で行われていた第71期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局(静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」)で、10日午後7時27分、139手で渡辺明王将(名人・棋王=37)を下した。展開がもつれて双方1分将棋となる激戦の末、王将戦掛川対局6戦全勝の「冬将軍」を攻略。開幕局を制した。第2局は1月22、23日、大阪府高槻市「山水館」で行われる。

藤井も人の子、勝利を前に少し慌てた。終局間際の131手目、秒読みに追われて先手4五桂と指そうとしたが、桂馬をポロリと落とした。まるで、名だたる武将を打ち取ろうとした足軽のように震えたか。もつれたこの将棋を象徴するシーンだった。「少しずつ苦しいのかなと思っていました。いろいろミスはあったかなと思いますけど、秒読みなので分からないままやっていました」。終局後の若き4冠の言葉が、それを物語っていた。

盤を眺めて冷静さを取り戻す。勝ち筋を読み切った。「先手4三金(133手目)から先手4五銀(135手目)の形できわどく詰んでいると思いました」。金、銀をスッと動かして、渡辺玉を攻略し、投了に追い込んだ。

今年の将棋界を占う、タイトル戦史上初めて3冠に4冠が挑む注目シリーズは、いきなり死闘となった。渡辺は午後6時47分、藤井は午後6時56分、ともに持ち時間8時間のうち7時間59分を消費。60秒未満で指し手を要求される「1分将棋」に突入していた。

相掛かりの出だしから前例のない手探り状態になり、ジリジリとした小競り合いが続く。神経と時間を削り合う、ジャブの応酬だ。午後3時のおやつ。初日の午前、午後と、2日目午前のおやつでスイーツを口にしていた藤井は、パイナップルジュースとアイスティーを頼んだ。固形物を胃袋に入れる暇はなく、飲み物を流し込んだ。

渡辺が王将戦掛川対局で過去6戦6勝なら、こちらはタイトル戦7番勝負の2日目のおやつを飲み物2種類で通して5連勝中。昨年8月に王位を初防衛した王位戦7番勝負第5局に加え、同年10〜11月の竜王戦7番勝負で4連勝。今局で6連勝とした。

今年最初の対局で、幸先よい白星となった。昨年暮れに行われた合同会見で、藤井は新年の抱負の中で「道」と揮毫(きごう)した。早ければ、19歳7カ月と史上最年少での初の王将獲得と5冠達成となる。まだまだ道のりは遠いが、足掛かりにはなった。「第2局に向けて、しっかり振り返ってつなげられるようにしたい」。今年も活躍から目が離せない。【赤塚辰浩】

◆将棋界の5冠 過去3人いる。第1号は故大山康晴15世名人。1963年(昭38)2月2日、39歳10カ月で達成した。獲得タイトルは名人・十段・王位・王将・棋聖。次いで中原誠16世名人(引退)が78年2月6日、30歳5カ月で同じタイトルを獲得。直近では、93年8月18日に羽生善治九段が史上最年少の22歳10カ月で達成。この時は竜王・王位・王座・棋王・棋聖を保持した。