【菅首相辞任】「菅退場」こそが最大カンフル剤で浮揚策?総裁選は混戦模様

菅義偉首相が3日、自民党総裁選(17日告示、29日投開票)への不出馬を表明し、今月30日までの総裁任期を務めて退陣する意向を示した。総裁選は岸田文雄前政調会長が出馬表明しているが、菅VS岸田の2軸から構図が一変しそうだ。河野太郎行革相、野田聖子幹事長代行、石破茂元幹事長ら出馬して乱立すれば、次期総理を争う混沌(こんとん)の総裁選レースとなる。

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突然の退陣表明に政界は激震に見舞われた。自民党本部で行われた党臨時役員会で不出馬を表明し、官邸で会見に応じた菅首相は「新型コロナ対策と総裁選の選挙活動には莫大(ばくだい)なエネルギーが必要であり、両立できない。コロナ感染防止に専念したいと判断した。総裁選には出馬をしない」と語った。だが、質疑はなく、約2分で会見を打ち切るなど、事実上の退陣に追い込まれた無念さをにじませた。

党臨時役員会では、菅首相の決断は満場一致で承認され、二階俊博幹事長のねぎらいの言葉とともに大きな拍手が起こった。菅首相は、わずか5分ほどで席を立って真っ先に退室。総裁選、次期衆院選へ向け「菅退場」こそが、最大カンフル剤で浮揚策という党内の総意が映し出された。

安倍晋三前首相の体調不良による突然の辞任を受け、昨年9月に菅政権が誕生。「国民のために働く内閣」と標榜した。しかし、新型コロナウイルス対策で「後手後手の後手」、「細切れ」、「先細り」など批判を浴びてきた。感染拡大が懸念された東京五輪・パラリンピックを強行して専門家の指摘通り、医療提供体制が崩壊寸前になっても、先月25日の会見では「明かりは、はっきりと見え始めています」と楽観論を唱えるなど、国民目線とのズレは拡大。内閣支持率は下落を続け、自民党への逆風は強まるばかりだった。

総裁選を前に、若手議員を中心に「菅首相では次期衆院選を戦えない」と危機感が募り、菅首相を支えてきた無派閥グループからも「菅離れ」の動きが見え隠れし、総裁選出馬に必要な国会議員20人の推薦人を確保する見通しがたたなかったとの臆測も流れた。

先月31日には、二階氏に9月中旬解散も選択肢と伝えた。総裁選を総選挙の後に先送りするプランで党内をけん制した形だが、逆に党内の猛反発を受け、今月1日に撤回。安倍晋三前首相、麻生太郎財務相、甘利明税制調査会長の「3A」など党内の有力勢力から支援も得られず、一気に求心力が崩壊した。知名度の高い河野氏、小泉氏、石破氏らに幹事長を含めた役員就任を打診も、不発に終わった。もはや四面楚歌となり、退陣の道しか残されていなかった。

菅再選が消えた総裁選は一転して乱立の様相で過熱している。すでに出馬表明している岸田氏に加え、河野氏も総裁選に立候補の意向を固め、野田氏も名乗りを上げるなど、混戦模様となった。【大上悟】