すべてを抱え込まないように/加藤一二三お悩み解決

すべてを抱え込まないように/加藤一二三お悩み解決

加藤一二三氏

<お悩み解決!ひふみんの金言>

 「ひふみん」こと、将棋棋士の加藤一二三(ひふみ)九段(77)が、あなたのお悩み相談に答えます。

 14歳でプロになり、今年6月に引退するまで63年間、勝負の世界に身を置いてきました。敬虔(けいけん)なキリスト教徒として30歳で、洗礼も受けています。生きる厳しさと、聖書の教えをベースに、指導対局ならぬ、人生指南をしてくれます。毎週水曜日に掲載します。

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<先手質問>

 75歳の母を介護するために、職を辞めようかと思います。独身の私が勤める会社は早期退職者優遇制度を打ち出し、退職金を1・5倍支払うとのことです。20年ほど前から母1人子1人でしたが、最近、母が脳梗塞になり、介護が必要な状況になりました。母の貯金が800万円、私が1500万円ほど。これと退職金、アルバイト(月10万円前後の収入)でやりくりしようと思いますが、介護辞職は早まった考えでしょうか? (51歳 男性技術職 東京都)

<後手回答>

 この方、とても親孝行ですね。尊敬します。キリスト教には、「親に尽くした孝養は、神に忘れられることはない」という教えがあります。少子高齢化に伴う介護による退職というのは、今の社会の問題でしょう。親の面倒を見たいというのはよく分かりますが、ずっと勤め続けた仕事を辞めるというのは、ちょっと待ってください。

 確かに早期退職者優遇制度で、退職金が割り増しされるのは魅力かもしれません。でも、現金はあっという間に消えるものです。

 将棋界でも数年前、65歳以上の棋士を対象にした「引退勧奨」がありました。退職金という形で、その時にまとまったお金をもらっていたとしても、なくなっていたと思います。資産運用とかできれば別ですが、私にはそんな能力もありません。結果的に、働き続けていた方が残ったというのが、私の経験です。

 この方に必要なことは、退職してまとまったお金を手に、貯金を崩しながら母親を介護することではありません。アルバイトなんて不安定ですし、慣れないことに苦労するのは目に見えています。それよりも、今の会社に定年まで勤め上げながら、介護の制度をいろいろと活用することだと思います。

 まず、会社に事情を話して仕事を軽減してもらう。理解はあると思います。すべてを抱え込まないように、ヘルパーなどを雇って、頼れるところは頼る。したたかに人生を生き抜くことです。