触らないで猛毒「カエンタケ」キノコ狩りシーズン本格化の中 専門家ら注意呼び掛け

触らないで猛毒「カエンタケ」キノコ狩りシーズン本格化の中 専門家ら注意呼び掛け

猛毒茸「カエンタケ」に注意

触らないで猛毒「カエンタケ」キノコ狩りシーズン本格化の中 専門家ら注意呼び掛け

21年8月に千葉県君津市で見つかったカエンタケ(千葉県立中央博物館提供)

<情報最前線:ニュースの街から>

燃える炎のような見た目をした猛毒のキノコ「カエンタケ」が、全国各地で見つかり、専門家が注意を呼びかけている。触るだけで炎症を起こし、食べた人が死亡する例も確認されている。東京都八王子市の上柚木公園で8月上旬に目撃情報があり、公園の関係者が除去作業を行った。キノコ狩りや山菜狩りシーズンが本格化する中、カエンタケの毒性を突き止めた東京農業大の橋本貴美子教授に話を聞いた。

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カエンタケは赤やオレンジがかった色で、手の指のような形をしている。上柚木公園では8月と9月に計3回、敷地内の切り株に約5センチ〜10センチのカエンタケが見つかった。公園の関係者が駆除し、切り株の周囲を規制している。神奈川県では県で管理する登山道周辺で目撃情報が相次いだ。県の自然環境保全センターがホームページで注意喚起を行っている。

カエンタケの毒成分は、東京農業大の橋本貴美子教授が、01年にカビ毒の「トリコテセン系化合物」であることを突き止めた。橋本氏によると、20年ほど前には図鑑にも載っていなかった珍しいキノコだったという。千葉県立中央博物館(千葉市中央区)によると、江戸時代末期の図鑑「本草図譜」に、カエンタケに似た「火焔だけ」が描かれており、解説に「大毒あり」との説明があるという。

橋本氏は毒性について「触るだけで皮膚が厚く剥がれる。食べると腹痛や下痢の後、頭が痛くなったり手足がしびれたりする。毛が抜け落ちたり、あらゆるところで症状を引き起こして、死んでしまう」と語った。カエンタケの見た目から、子どもが好奇心で触ってしまうことを懸念し「もしカエンタケを見つけて触ってしまったらすぐに、せっけんで洗うこと。食べてしまったら残り物や嘔吐(おうと)したものまで病院に持って行くことが重要です」と呼び掛けた。

カエンタケは国内で増加傾向にあり、主な要因は森林で「ナラ枯れ」が広がっていることだという。「カシノナガキクイムシ」という昆虫が、ナラの木に穴を開けてカビを生やして木を枯らす。カエンタケはそのカビを食べて育ち、枯れたナラの木の根元で増える。橋本氏によると、カシノナガキクイムシは一定程度の太さがある木を求めて穴を開けるといい、ナラ枯れの被害とカエンタケの増加は「コントロールするのが難しい」と語った。橋本氏はカエンタケのシーズンは6月から12月ごろまで続くと警鐘を鳴らした。【沢田直人】

◆厚労省HPでも症状など被害

秋のキノコ狩りシーズンを迎える中、厚労省はホームページで、食中毒を発生させる毒キノコに注意を呼びかけている。

厚労省では食用と似ている毒キノコを、症状やこれまでの患者数とともに紹介。確実に食べられるものと判断できないものは、「採らない」「食べない」「売らない」「人にあげない」などと強く訴えている。

橋本教授は、カエンタケの他に特に注意が必要な毒キノコとして「ドクツルタケ」を挙げた。見た目が白くてきれいな形をしているが、食べると嘔吐や下痢、肝障害などの症状が出る。93年には、名古屋大に通っていた留学生がドクツルタケを食べて亡くなった。そのほか、下痢や腹痛を起こす「クサウラベニタケ」や「カキシメジ」といった、食用のシイタケとよく似た毒キノコを危険視した。

◆迷惑たき火でツチクラゲ

キャンプ地などの指定された場所以外で行われたたき火のせいで、マツの木などを枯らすキノコが発生し、キノコ盆栽家の渋谷卓人さんが迷惑行為をやめるようツイッターで訴えている。

渋谷さんによると、とある登山道で10日に、焦げた炭の近くに生えたツチクラゲを見つけた。「迷惑キャンパーによるたき火跡」といい、以前から使用後のアルミホイルを埋めて隠すなどといった迷惑行為を、苦々しく思っていたという。

環境緑化を推進する「日本緑化センター」(東京都新宿区)によると、ツチクラゲはマツの木などを枯らす「つちくらげ病」を引き起こす。たき火や山火事などで地面が高温になることで、胞子の発芽が促進されるという。大きさは数センチほどで牛のふんのような見た目をしている。

◆トトロの森はナラ枯れ被害

東京都と埼玉県にまたがって広がる狭山丘陵の「トトロの森」でナラ枯れの被害が広がっている。

トトロの森は映画「となりのトトロ」の舞台のモデルとなった。埼玉県所沢市の「トトロのふるさと基金」が、90年から寄付金を募って森を購入し、狭山丘陵の自然を守ろうと保全活動を行っている。緑色に染まるはずの森は近年、茶色く枯れた木でまだら模様になっている。担当者によると、ナラ枯れの被害が広がり、症状のある木は、20年に61本、21年に273本を確認。22年は9月10日時点で446本にまで増え、年々増加している。

担当者によると、近年はまきとして木を切ることがなくなり、森の老齢化が進んだ。高齢樹にカシノナガキクイムシが持つ菌の耐性がなくなったことが、枯れる原因と考えられるという。近隣の住宅や道路などに、倒木の恐れがある木には、虫を捕まえるためのトラップを仕掛けて保護に取り組んでいる。また、トトロの森ではこれまでに、カエンタケを2、3個ほど確認した。一般の人が入れない場所のため、人的被害は出ていないという。