親にも不人気で官僚はオワコン? エリート就活生の"キャリア官僚離れ"が止まらないワケ

親にも不人気で官僚はオワコン? エリート就活生の"キャリア官僚離れ"が止まらないワケ

優秀な学生たちの間で国家公務員総合職、いわゆるキャリア官僚の人気がダダ下がり中だという

キャリア官僚を目指す学生が減っている。

キャリア官僚とは、国家公務員「総合職(旧・T種)」の試験をパスした中央省庁の幹部候補のこと。政策立案や予算案の作成、国会対応など"国を動かす"業務に携わるが、今年は不人気ぶりが際立った。

人事院が8月末に発表したデータによると、国家「総合職」試験の志願者数は3年連続で減少し、今年度は1万9609人とT種試験が始まった1985年以降で最低。直近のピークだった96年度(4万5254人)と比較するとほぼ半減だ。

わが子に公務員をすすめたい親の本』(実務教育出版)の著者で、公務員予備校EYEなどで講師を務める寺本康之氏がこう話す。

「ひと昔前は、国立大の中でも東京大学や京都大学、私立でも早慶レベルの学生はキャリア官僚を目指すのが当たり前でしたが、今はその傾向がずいぶん変わっており、エリート学生による"官僚離れ"が深刻になっています」

実際、今年度の東大の国家総合職の試験の合格者は329人と過去最少で、5年前(2013年度・454人)から100人以上も減っている。

「最近の優秀な学生は、もっと稼げるアクセンチュアやマッキンゼー・アンド・カンパニーなど外資系企業を志望する傾向が強い」(寺本氏)

現役の東大生もこううなずく。

「国家総合職は入るのが大変ですし、仕事がキツい割に給与が安い。45歳を過ぎて課長になれても年収1000万円に届くかどうかですから。それに3年に一度は異動で振り回され、民間企業からはプライドが高くて扱いづらいと思われるのでしょう......官僚はキャリアを積めば積むほど『転職に弱くなる』とも先輩から聞いています。それなら最初から民間の大企業に入ったほうが無難と考える学生が多いですね」(経済学部3年)

今年度、さらに官僚離れを加速させたのが相次ぐ不祥事だ。寺本氏がこう話す。

「森友学園と加計学園の一連の騒動では文書捏造、隠蔽、忖度、責任逃れといった霞が関の悪しき体質が浮き彫りになり、その後もセクハラ疑惑で財務省トップの事務次官が辞任に追い込まれる事態に......。その結果、それまで国家公務員一本に絞っていた学生ですら、『失望した』『省庁を目指す気持ちが萎えた』と民間志望に切り替えるケースが目立つようになりました」

もはやエリート学生の間では「官僚はオワコン」(前出・東大生)と見る向きもあるのだ。

さらに、公務員を目指す学生の就職活動にはこんな異変も起きていた。

「昨年頃から地方自治体を中心に"保護者向け"の就職説明会が急増するなど、公務員試験の世界でも親が子供の就活に関与する傾向が強まっています。そのため、今年は本人が『霞が関で働きたい』と言っても、親に『やめたほうがいい』と強く反対されて志望先を変える学生が多かったですね」(寺本氏)

学生やその親が国家公務員を避けるようになった理由は過酷な業務にもある。

「『公務員は定時で帰れてラク』という印象を持たれがちですが、実は、国会対応などで振り回される国家公務員の業務は想像以上に過酷なんです」(寺本氏)

国家公務員の労働組合でつくる「霞が関国家公務員労働組合共闘会議」が毎年公表している残業実態に関する調査資料によると、直近のものでは昨年(17年)1年間の残業実態について、各省庁の職員約2000人が回答している。

「全省庁の月の平均残業時間は33時間とそれほどは多くないのですが、80時間(過労死ライン)以上の残業も6.3%。また、中央省庁別の残業時間では厚生労働省が最多で、その詳細を見ると医療、介護、年金などに関する業務を担う厚生部門が53.1時間、雇用対策を進める労働部門が49.1時間とワースト1位、2位。さらに、労働部門で働く6割の人が『過労死の危険を感じたことがある』、7割の人が『休日出勤がある』、8割以上の人が『残業手当に不払いがある』とも回答しています」(寺本氏)

働き方改革の旗振り役であるはずの厚労省が、実は最も"ブラック"な職場だった! という事実も官僚離れに拍車をかけていたのだ。

だが、腐っても国家公務員。

「平均月給は大企業に準じた水準で、41万6969円(*平均年齢43.2歳、平成29年国家公務員給与等実態調査より)。これに残業代や年2回の期末・勤勉手当(ボーナス)、地域手当などを加えると平均年収は700万円近くになります」(寺本氏)

人気下降中の今だからこそ、キャリア官僚の好待遇と高ステイタスを得るチャンスともいえる。

「筆記テストや面接などがある国家公務員の採用試験の合格倍率は、総合職で10.9倍、一般職で4.3倍といずれも過去最低水準で、国家公務員の職を得やすい環境。しかも、ここ数年は東大や京大の志願者が減った影響もあり、今まで国家総合職に受からなかった二流、三流クラスの大学から合格者が続出するという現象が起きています」(寺本氏)

さらに、今年度の試験後には文科省のキャリア官僚ふたりが逮捕された汚職事件、障害者雇用の水増しなどの不祥事が相次いで発覚している。となれば、来年度はますますエリート学生の志願者が減り、キャリア官僚の職を得やすい環境が生まれそうだ。

最後に、数ある国家公務員の職の中で寺本氏のオススメを聞くと意外な答えが......。

「国税庁ですね。税の申告の指導や徴収業務などを担う国税専門官は、2月から4月の確定申告シーズン以外は『17時以降の残業が禁止』、シーズン中の時間外労働も『3時間以内』とする残業規制があります。国家公務員の中では 最も"ホワイトな職場"といえるでしょう」

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