若い世代が安倍政権を支持する“雇用改善”もアベノミクスとは無関係!? そもそも経済は「全然潤ってない」

若い世代が安倍政権を支持する“雇用改善”もアベノミクスとは無関係!? そもそも経済は「全然潤ってない」

話題の書『アベノミクスによろしく』著者・明石順平氏(右)と東京新聞社会部記者・望月衣塑子氏。若い世代が安倍政権を支持する理由は「雇用の改善」だが、実際は…?

働き方改革法案に盛り込まれていた裁量労働制に関する「不適切なデータ」、森友学園への国有地売却問題をめぐる「決済文書改ざん」、そして自衛隊の「日報隠蔽」──今、安倍政権への信頼が大きく揺らいでいる。

安倍政権が高い支持率を維持してきた最大の理由はアベノミクスによる経済成長と言われているが、政権の命綱であるこの経済政策の成果も「都合のいいデータ」によって築かれた砂上の楼閣だったとしたら──

今、話題の一冊『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)の著者・明石順平氏は「アベノミクスは大失敗だった」と断言。同書では政府や国際機関が発表した公式データを用いながら、アベノミクスの成果が幻想に過ぎないことを看破している。

なぜ、大失敗だったのか? 菅義偉官房長官への厳しい追及で一躍その名が知られた東京新聞社会部記者・望月衣塑子(いそこ)氏との対談で語る――。

前回記事では、「実質賃金が下がった理由」「実質GDP成長率は民主党政権時代の3分の1」など、アベノミクスの実態を明かしたが、この第2回では、若い世代が安倍政権を支持する理由となっている「雇用の改善」の裏側を暴く──

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望月 株価上昇はアベノミクスの最もわかりやすい成果とされています。「異次元金融緩和」でお金が市場にジャブジャブ余っているから上昇しているのかな、という理解でしたが、そうではなく株価を支えていたのは公的資金の投入だった。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用する巨額の年金資金が株式市場に注ぎ込まれていたんですね。

それと、日銀によるETF(上場投資信託)の大規模な購入。今の株高が「官製相場」だということ、そしてこれを止めたら、おそらく株価は暴落するだろうということもこの本でよくわかりました。安倍政権を支えている経団連の人たちは、このようなあからさまな株価維持の実態をわかっていると思いますか?

明石 当然、わかっているでしょうね。経済について一定以上のリテラシーのある人ならば、アベノミクスの実態を知っているはず。でも、経団連は輸出関連の製造業など円安で恩恵を受ける人たちが中心だから、彼らにとってアベノミクスはありがたい政策なので支持する理由があるんです。

望月 一方、若い世代が自民党を支持する理由は、やはり「雇用」だと思います。政府は有効求人倍率の高さをアピールしているし、実際、就職は売り手市場になっている。若い人たちは改憲などイデオロギーに関する問題よりも、自分たちの仕事に関する経済政策を重視している。でも、明石さんは「雇用の改善もアベノミクスとは関係ない」と指摘していますよね。

明石 関係ないですね。現実には民主党政権時代から雇用状況は改善されてきています。その理由として、まず挙げられるのは「生産年齢人口の減少」です。要するに人手が足りない。特に新卒の人にとっては、ここ数年で団塊世代がゴソッと現役から抜けたわけですから、当然、椅子は空くわけです。あとは医療・福祉分野がすごく伸びていて、4年間で100万人以上増えています。

それ以外で何が増えているかといえば、小売とか飲食です。これらは国内で儲けているわけですから、アベノミクスによる円安は全然関係ない。むしろ円安による輸入食材の値上がり分のしわ寄せが、労働環境や賃金に反映される危険性すらあると思います。

もうひとつは、雇用構造の転換です。正社員はなるべく雇わずパート・アルバイトで賄(まかな)う。医療・福祉も小売も飲食も、みんな非正規雇用で回していくのが一般化しているので、当然、数字の上では「有効求人倍率」も「有効求人数」も上昇するよね、という話です。

明石 このように分析すると、雇用の改善とアベノミクスは全然関係ないということが見えてきます。特に医療・福祉分野の雇用は、この先どれだけ不況になっても、社会保障費を削減しない限りはどんどん増えていくでしょうね。

望月 それなのに、菅さんなんかは会見で「民主党時代よりも雇用が遥かに改善している」と、あたかもそれがアベノミクスの成果であるように繰り返し強調している。

第二次安倍政権成立以降、森友や加計の疑惑だけじゃなく、政策面でも安保法制や特定秘密保護法、共謀罪、憲法改正も含めていろんな問題がありましたが、そうした議論がすべて「アベノミクスで経済は上向いてるからいいでしょ」という雰囲気に押しつぶされる形で今の長期政権が続いています。

ある政府関係者は、「日本人というのは、右も左も基本的には関係なくて、やはり一番大切なのは“下半身”を潤(うるお)すことだ」と言っているんです。要するに「儲かってまっせ」と、なんとなく経済がうまくいっている雰囲気があれば、右も左もとりあえずついてくるんだと。おそらく経団連なんかも、例えば憲法改正なんてどうでもいいと思っているはずです。政権に近いある人物も「改憲は総理のご趣味の世界だから」って、周囲に説明しているくらいですから(笑)。

菅さんも経済通だとは思えないけど、支持率は景気に支えられることをわかっているから、ひたすら「経済が潤ってる」とアピールし続ける。でも本当は「全然潤ってないよ」という話ですよね。

明石 そう思い込まされているだけです。アベノミクスによる好景気が政権の最大のウリになっているけど、現実にはその中身は空っぽです。強調しておきたいのは、この本はイデオロギーとは無関係で、銭(ぜに)の話しかしていません。私自身もこの本を書く以前は、安倍政権は民主党政権よりはマシだろって思っていたくらいです。

でも、安倍政権は「経済で結果を出す」と言いながら、実際には出していない。だったら去ってくださいという、単純にそれだけのことなんです。

望月 経済が苦手な人にも是非読んでほしいし、私自身もこの本に書かれたデータを基に菅さんにバシッと質問や反論をしていきたいと思います。官邸からは「あまり長々と質問するな」と、うるさく言われているんですけど(笑)。

●第3回⇒アベノミクスの罠…裁量労働制で経済成長はありえない! “壮大な嘘”に国民は「お別れ」を


(取材・文/川喜田 研 撮影/保高幸子)

●明石順平(あかし・じゅんぺい)


弁護士。1984年、和歌山県生まれ、栃木県育ち。東京都立大学法学部、法政大学法科大学院を卒業後、現職。主に労働事件、消費者被害事件を担当。ブラック企業被害対策弁護団所属。ブログ「モノシリンの3分でまとめるモノシリ話」管理人

●望月衣塑子(もちづき・いそこ)


1975年、東京都生まれ。東京新聞社会部記者。慶応義塾大学法学部卒業。千葉、埼玉などの各県警、東京地検特捜部、東京地裁・高裁を担当後、経済部などを経て社会部へ。2017年4月以降、森友・加計問題を取材し、官邸会見で菅官房長官の追及を続ける。著書に『武器輸出と日本企業』『新聞記者』(角川新書)など




●『アベノミクスによろしく』
 (インターナショナル新書 740円+税)

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