ある旧友の死と、「自由な社会」とは何かという話

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『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、アメリカが提示する「自由の形」について語る。

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先日、アメリカに住む友人の訃報が届きました。かつてのバンド仲間で、最後に会ったのは25年前。僕がハーバード大学に在学し、パンクと即興演奏を組み合わせた音楽をしようとしていた時期、同じ新聞広告のメンバー募集に応募したふたりはオーディションの現場で出会いました。

僕より2、3歳上のドラマーで、演奏の能力は素晴らしく、まっとうにやっていればスタジオミュージシャンとして十分食っていけたはずです。

彼はニュージャージー州の典型的な白人労働者階級出身で、高校の頃からやんちゃはしていたようですが、新婚で、ボルチモア郊外に家を建てたばかり。しかし僕との出会い以降は眠りから覚めたように、人生を違う方向へと踏み出しました。

前衛芸術、パンク、アナーキズムを独特に組み合わせた自前の「思想」で高揚していた僕の熱が、彼の中の野生を「追い焚(だ)き」したのです。

カーディーラーで働く新妻が愛想を尽かして去ると、彼はサンフランシスコに移り、仲間と同居する自宅で毎晩のようにパーティを主催。アーティストやミュージシャン、博士号持ちのIT起業家......"ヤバいヤツら"と共に語らい、アルコールやドラッグを大量に消費する日々だったようです。

一方、僕は日本でラジオ番組を持ち、次第に彼と正反対の、まっとうで不自由な生き方になっていきました。しかしある日、その不自由さに疲れ果て、口座にあるお金をすべて使って国内外で完全自費のツアーを敢行すると決意。

英語で言う"Crash&Burn(クラッシュ&バーン)"(成り行き任せ)な、人生リセットのためのツアーで、彼にもドラマーとして参加してもらいました。

日本の音楽が禁止されていた韓国や、独裁国家の中国でパンクを演奏することのヤバさに日々身震いし、忘れかけていた高揚感を味わった僕は――ツアー終了後にはすっかり燃え尽き、結果的にその後、彼と連絡を取ることはありませんでした。

以来25年、彼も彼なりに生きてきたことを訃報と共に知りました。20年前にLAから車で3時間ほどの砂漠の街に移り住み、コンビニの店長をしながら、客が来ない夜中には店をパーティ会場にして、奔放な人生を貫いた。アングラシーンでは知る人ぞ知る存在で、わざわざ会いに行く人もいたようです。

還暦を迎えたばかりだった彼の死因は、アルコール由来の障害でした。オンラインで開かれた「偲(しの)ぶ会」の参加者は、お堅い彼のきょうだいたち、サンフランシスコに移住する前後の友人たち、そして彼をこっち側に引き込んだ僕。

当初はご家族に何を言ったらいいかわかりませんでしたが、妹さんが「昔、兄にひどいイタズラをされた。なのにあいつは笑ってた!」と"被害ネタ話"をしたのをきっかけに、皆が彼のエピソードや武勇伝を語りだし、涙あり笑いありのとてもいい会になったのです。

日本基準では、彼は単なる"ダメな人"かもしれません。ただ僕は、自分を貫き通した彼への尊敬と共に、「アウトサイダーがとことんアウトサイドで生きていける」「自分らしく生きることを咎(とが)められない」アメリカ社会の懐の深さを感じてしまう。

強烈な自己責任の裏返しでもあるそのカオスなエネルギーは、イノベーションの源でもあるのでしょう。アメリカが提示する「自由の形」を、皆さんはどう考えるでしょうか。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(関テレ)、『所さん!大変ですよ』(NHK総合)ほかメディア出演多数。TBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』への出演(地球物理学の世界的権威・ジェンキンス教授役)が各所で話題に!

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