被害者は女性だけじゃない。男も『フェイクポルノ(AIアイコラ動画)』でゆすられる!

被害者は女性だけじゃない。男も『フェイクポルノ(AIアイコラ動画)』でゆすられる!

一般男性にも詐欺・恐喝の魔の手が忍び寄っていた!

今年、AI技術を駆使したアイコラ動画「フェイクポルノ」がアメリカで大流行。有名女優とAVをかけ合わせた動画が出回る一方、リベンジポルノ目的で一般女性が被害に遭うケースが相次いでいる。

だが、しかし、フェイクポルノの被害者は女性だけにあらず。ごくごく普通の一般男性にも、魔の手が忍び寄っていた!

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■"AIアイコラ動画"フェイクポルノの衝撃

「一億総AV出演時代」が到来するかもしれない――。

そんなことを感じさせる衝撃の体験談が、本誌取材班の元に届いた。

「Facebookで、オーストラリア・シドニー在住の香港出身の女性から、『友達にあなたの卑猥(ひわい)な動画を送信されたくなければ10万円支払え』という脅迫文と共に、僕が自慰行為をしている動画が送られてきたんです......。でも、僕はAVに出演したことはないし、もちろん自慰動画を撮影したこともない。その香港人女性と過去に交際していたわけでもないし、そもそも面識すらありません。つまり、送られてきた動画はニセモノだったんです」(30代男性・A氏)

今年4月、バラク・オバマ前アメリカ大統領が、「トランプ大統領は救いようのないマヌケだ」と発言する動画がYouTube上で公開され、大きな話題になった。

「あのオバマがそんなことを......」と思った方もいるかもしれないが、この話には続きがある。実はこれ、AI(人工知能)に顔写真を大量に読み込ませて学習(ディープラーニング)させることで、元の動画の顔の部分だけを作り替える「ディープフェイク」と呼ばれる技術が使われた動画であり、つまるところニセモノだったのだ。

そして、この技術をアダルト方面に応用したのが、「フェイクポルノ」。アメリカではすでに流行しており、例えば、ハリウッド女優のガル・ガドット、エマ・ワトソン、スカーレット・ヨハンソンなど、錚々(そうそう)たる女性芸能人のフェイク動画がすでにかなりの数、ネット上にアップされている。わかりやすく言えば、一時大流行し、女優たちを苦しめることになった「アイコラ」の動画版になるだろうか。

前置きが少々長くなったが、その被害は女性だけでなく、前述の体験談のように、男性にも「詐欺」や「恐喝」という形で降り注ぐ可能性があるのだ。

■わずか1年で急速に進化

本題に入る前に、フェイクポルノという新しい技術が生まれた経緯について触れておきたい。海外のアダルト事情に精通するテック系ライターが、その背景や現状について語る。

「フェイクポルノが登場したのは昨年末。『deep fakes(ディープフェイクス)』と名乗るプログラマーが、日本でいう『2ちゃんねる』のような掲示板サイト『reddit(レディット)』に動画をアップしたのが始まりです。

AIを駆使して作られたガル・ガドットの動画は、『義兄の元に届けられたアダルトグッズをガルが誤って開けてしまい、義兄との性行為に発展する』といった過激な内容でした。既存のポルノを土台にしているから、まあ当然なんですが。

その後、この技術を参考にして、別のプログラマーが『FakeApp(フェイクアップ)』という、フェイク動画を手軽に作ることができるアプリを開発し、無料で公開。それ以降は、そこそこのPCスペックと技術があれば、一般人でもフェイクポルノを簡単に作れるようになったんです。実際、日本国内でも専門の投稿サイトがすでにあり、有名女優、アイドルの動画が多数確認できます」

ちなみにだが、最初に投稿されたガル・ガドットの動画は、途中で顔が四角に変形したり、輪郭の内側に不自然な境界線が発生したりするなど、精巧とはいっても、「別の顔を合成している」ことがわかるレベルだった。

しかし、それから1年もたたないうちに、フェイクポルノのクオリティは急速に進化しているという。

「AIは学習すればするほどアウトプットが向上する性質を持ちます。フェイクポルノに関しては、好事家たちがそれぞれの学習成果を発表し合う傾向があるため、最近の動画はクオリティがかなり高い。例えば、以前は女優の顔があまり動かず、正面を向いていることが多い騎乗位の動画がかなりの割合を占めている印象でしたが、今は顔を横から映すことが多い後背位の動画も増えてきています」(前出・ライター)

■男もこうして狙われる?

素人でも高いクオリティのフェイクポルノが作れるようになった結果、海外ではすでにさまざまな犯罪に利用され始めている。なかでも目立つのがリベンジポルノだ。

「『FakeApp』の公開後、とあるユーザーが『reddit』に『別れた彼女とのフェイクポルノを作りたい』と投稿し、SNSにアップされていた写真を元に動画が製作され、ネット上で公開されるという事件が起こりました。今はまだ小規模ですが、アメリカや韓国では、この手法によるリベンジポルノが社会問題化し始めており、その結果、世界最大のポルノサイト『Pornhub(ポルノハブ)』ではフェイクポルノの投稿が禁止となりました」(前出・ライター)

男性の場合、女性と比べてリベンジポルノの需要はなさそうに思えるが、実は技術面から考えると"男性ならではの危険"もあるという。

「男性は女性に比べて髪型のバリエーションが少ない。また、バストサイズで判別がつくということもないので、体形が男優とある程度似ていると、かなりリアルさが増してしまいます。実際、中年男性だと、けっこうな人が人気男優の吉村卓さん的な体形ですよね? もちろん、AVだけでなく、ゲイ向けのビデオも素材になりうるでしょう」(前出・ライター)

Facebookで恐喝の被害に遭った30代男性のA氏も、送られてきた動画は「かなり自然なものだった」と証言する。

「送られてきた自慰動画は、おそらくゲイ向けのビデオを元に作られていたんですが、クオリティはかなり高かったです。素人が自撮りしたみたいな動画だけど、画質が少し粗いからこそリアルに感じられました。

AV並みの映像のキレイさだと、もしバラまかれたときに『さすがにアイツじゃないよね』って友人たちもわかってくれると思うけど、プライベートっぽい映像だと逆に怪しいと思われちゃいそうで......。自分で見れば輪郭も違うし、肌の色も違うって思うけど、他人が見たらわかんないと思いますよ」

AVを土台にしていたとしても、動画の画質を粗くするのは簡単なこと。わざと圧縮すればいいだけだ。A氏を狙った犯罪者が、そんなひと手間を加えた可能性もある。

まして、スマホが普及した現代では、行為中に裸の写真を撮影する人も増えており、いわゆる"ハメ撮り"も市民権を得ている。このような現状を踏まえれば、たとえ「ニセモノだ!」と主張したところで、なかなか信じてもらえないだろう。

■SNS脅迫は勇気を持って無視せよ!

脅迫文と動画を送りつけられた後、A氏はさらに怖い体験をすることになった。

「脅迫文では、『ウエスタンユニオン新宿支店の国際送金サービスを利用しろ』と指定されていました。しかし、もちろん受け入れることはできないので、『所在国であっても、本人の許可なく卑猥な動画を作成・配信することは肖像権の侵害で有罪です。

日本の警察に届け出ます。Facebookの登録内容で個人を特定できますよ』と返信。もちろん、本音を言えば偽名で登録しているかもしれないし、アイコン写真だってフェイクの可能性が高いってのはわかってましたよ。でも腹立たしくて、思わず返信してしまいました。すると、しばらくたって、メッセンジャー経由で電話がかかってきたんです。無視しても、何度も、何度も......」

メッセンジャー経由で電話がかかってくる。ネットが発達し、世界中とつながれる時代だからこその「本当にあった怖い話」という感じだ。

だがこの後、A氏は勇気ある行動で、被害を食い止めることに成功する。

「正直、かなり怖かったけど、『ここで相手にしたら完全にターゲットになる』と思って、電話を無視し続けたんです。その後、日本の警察にも届け出て事態は収束。Facebookアカウントの名前を日本語で登録し直したら、ぱったり来なくなったので、それも効果があったのかも。もう顔写真は怖くて載せられません......」

勇気を持って無視する――。これがこの手の脅迫・詐欺では大事なこと。というのも、基本的に詐欺師・悪徳業者は反応してきた人に狙いを定め、そこから本格的な「ゆすり」を開始するからだ。

一度被害に遭った人が「リスト化」され、別の犯罪グループに情報が売られることからもその実態がうかがえる。だからこそ、勇気を持って無視することが大事なのだ。

■日本人の犯罪者が使いだすとヤバイ?

しかし今後、フェイクポルノが国内でも普及し、日本人の犯罪グループが用いるようになったら......。A氏の比ではないほど、悪質な犯罪が横行するだろう。というのも、外国人より、日本人のほうが手の込んだ脅迫・詐欺を仕組んでくる可能性が高いからだ。

「例えば、もしも『大学時代に部活の先輩に誘われてゲイ向けのビデオに出演したときの映像をばらまくぞ』などと、ありそうな設定で脅されたら、つい振り込んでしまう人もいるのではないでしょうか」(前出・ライター)

もちろん、今回のトラブルはほんの一例にすぎない。今後、より簡単にハイクオリティな動画が作成できるようになれば、いじめや嫌がらせなど、ありとあらゆるケースで悪用される可能性だって高まるだろう。

「知らないうちにAV出演しないように、SNSには顔がわかる画像は載せない」。そんな冗談のような話が現実になりつつある。

取材・文/テクモトテク イラスト/渡辺貴博

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