時代を画する転換期、環境に合わせすぎるのはリスクにもなる

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『週刊プレイボーイ』で「挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが、「環境に合わせすぎるのはリスク」と語る理由とはーー?

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この春から新生活を始めた方々は、そろそろ慣れ始めた頃でしょうか。ご自身の環境の変化に適応しようとするのは当然のことですが、もう少し広い視野で見渡せば、世界は今、大げさではなく時代を画するような転換期に直面しています。

各国の相互依存関係が深まった現代では、経済合理性の観点からいって戦争をするメリットなどない――その前提は、ロシアのウクライナ侵攻で完全に覆されました。時計の針が100年以上も巻き戻されたような侵略を前にして、欧州では安全保障やエネルギー政策の転換が喫緊の課題となっています。

特に、変化を嫌うという面で日本と比較的近い傾向があると思われるドイツまでもが右往左往していることが、その波の大きさを雄弁に物語っています。

この波は、さまざまな形で必ず日本にも届きます。しかも安全保障や経済だけでなく、あらゆる面で変化への圧力は強まるはずです。そして過去の例を見ても、この国の社会やシステムは、とりあえず"無意識の生命維持装置"を作動させて現状維持を試みる可能性が高いでしょう。

他者と歩調を合わせる、ルールを守る、空気を読む。これらは日本社会の特徴的なアセット(財産)で、欧米に比べて新型コロナの感染拡大を抑えられた要因でもあるとも思います(経済的損害は別として)。ただこの性質は、少子高齢化も相まって、既得権層が変化を真正面から受け入れず逃げ切ろうとする動きにもつながります。

ごく身近な話でいえば、週休3日制が導入されてもお父さんは育児に積極参加せずゴルフに行くとか、あるいはそもそも週休3日になったら給料も減るという本末転倒な仕組みしか用意されないとか、さまざまな形で"骨抜き事例"が出てくると思います。

若い世代の皆さんには、今の社会に対するさまざまな不満や疑問があり、改善への願いがあり、自己実現への思いもあるでしょう。環境に適応しようとするあまり、その火を消すことはしないでほしいと思います。帝政ロシアのロマノフ王朝末期のように、混乱と変化に翻弄(ほんろう)されながら、かつての栄光にすがる側の人々にくみする必要はありません。

現状をすべて否定し、ぶっ壊せと言っているわけではありません。ただ、今のルールや価値観を絶対視して"聞き分けのいい子"であることはリスクになります。逃げ切りや軟着陸を目指す高齢層がリタイアする頃、気づけば一緒に身動きが取れなくなっていた......などということにならないように。

もうひとつつけ加えるなら、日進月歩のさまざまなインターネット関連サービスは、有効に使えばどこへでも飛んでいくことができる半面、無為に時間を過ごしたり、より楽な生き方をする使い方もできてしまう。それらは資本家が消費社会の奴隷をつくるためのツールでもあることは知っておくべきでしょう。

漫然と生活しても、あと10年くらいは変わりなく生き続けられる。でも、その先は目に見えて可能性が先細りしていく危険性が高いと思います。優秀な人が海外に活路を見いだすケースも増えるでしょうが、日本を脱出する以外にもソリューションはたくさんあるはず。それを選び取れるだけの準備はしておいたほうがいい、というのが私の考えです。

●モーリー・ロバートソン(Morley ROBERTSON)
国際ジャーナリスト、ミュージシャン。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。レギュラー出演中の『スッキリ』(日テレ系)、『報道ランナー』(カンテレ)、『所さん!大変ですよ』(NHK総合)ほかメディア出演多数。昨年はNHK大河ドラマ『青天を衝け』、TBS系日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』への出演でも話題に!

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